レンジアレンは新しいリン吸着剤ですが、サプリメントなので、獣医に処方されることもあれば、そうではないこともあります。
愛犬に少しでも長生きしてもらいたい、生活の質を維持してあげたい、そんな思いから気になっている人も多いと思います。
サプリメントとはいえ、獣医の指示もなく、食事制限が必要な愛犬に飼い主の独断で与えても大丈夫なのか心配かもしれませんが、サプリメントとして正しい使い方をすれば、大丈夫です。
正しい使い方をするためには、レンジアレンについてよく理解しておく必要はあります。
この記事では、愛犬チャコに与えるために調べたことなど、安心して愛犬に与えるために知っておきたい情報や与え方について紹介します。
長いので気になる部分だけを読んでもらってかまいません。
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レンジアレンはこんなリン吸着剤
一番気になるのは、愛犬に役立つのかどうか、だと思います。
犬での研究成果(論文)は見つけることはできませんでしたが、何より、結果は数字として見ることができますし、私も愛犬へ使ってみて実感できました。
ちなみに、猫や人(SBR759の治験)では研究成果(リファレンス参照)を確認できました。
レンジアレンのメリット・デメリット
愛犬に与えるメリット
- リンの吸着効果が高く、どんな食事でも、リンのコントロールをサポートする
- 食事でのリンの不安や心配を解消でき、愛犬の生活の質を維持・改善できる
- 愛犬に与えても、それ自体が病気のリスクになったり、重大な副作用を起こさない
- 鉄剤として鉄分を補えるので、進行し貧血が気になる場合にも役立ってくれる
- 吸着効果が高く、増量時もより少ない給与量で済むので無理なく与えやすい
デメリット
- 他のリン吸着剤よりも価格が高め
- リンのコントロールは生涯続ける必要があるので、頼りすぎると費用がかさむ
- リンの吸着に特化しているので、老廃物等は吸着できない
価格は高めですが、食事管理でリンは予後に影響するほど重要です。そのため、リンをしっかりコントロールできるメリットは大きいです。
リンのコントロールは、生涯続ける必要があります。つまり短期間だけ使用して、良くなったからやめるという使い方はできません。
そのため、レンジアレンに頼りすぎると費用がかさみますが、食事でもコントロールするのが基本ですから、極力、食事での制限と併用しましょう。
愛犬の生活の質を維持して、少しでも長生きしてもらって、愛犬と一緒にいられる時間を大事にできるのであれば、決して高くはないはずです。
幸い、サプリなので価格競争があり、ネットで探せば少しでも安く購入することもできますからね。
炭酸カルシウム系のリン吸着剤よりも吸着効果が高い
レンジアレンの主成分の第二鉄(三価鉄)は、吸着力が高いとされるランタン、アルミニウムと同じくらいの吸着能力があるとされています。
希土類元素(レアアース)であるランタンは、非常に吸着効果が高く、リン吸着材としてよく使われる炭酸カルシウムの1.5倍もリン吸着力があります。
そのため、リンの吸着効果で選ぶなら、炭酸カルシウム系よりも塩化第二鉄が主成分であるレンジアレンです。
リンの吸着効果が高いとこんなメリットがある
吸着効果が高ければ、使用量を増やさなければいけない状況でも、より少ない給与量で済むため、愛犬に無理なく与えやすいです。
与える量が増えてしまい、愛犬がそっぽ向いて食べてくれなければ意味がありませんので。
それに、量を増やせば、副作用のリスクもそれだけ高くなる可能性があります。
炭酸カルシウム系のリン吸着剤は量を増やすと、カルシウム過剰(高カルシウム血症)に注意が必要です。
効果的に与えるために知っておくべきこと
レンジアレンは食事と一緒に与えることで効果を発揮する
レンジアレンは、食事のリンを吸着してくれるサプリです。血液中のリンを直接吸着できるものではありませんので、勘違いしないでくださいね。
レンジアレンは、大きく分けて2つの場面でリンを吸着してくれるサプリです。
- 食事に混ぜることで、食事の種類を問わず、食事の中のリンを吸着
- 胃のようにpHが低い(酸性)ほど吸着能力を発揮し、消化管(胃や腸)でもリンを吸着
食事の種類とは、ドライフード、ウェットフード、手作りなどのことです。それらを問わず使えるということです。
吸着されたリンは便と一緒に排泄されます。
食事に含まれるリンを吸着してくれるものなので、食事に混ぜたり、食後(時間を空けずに)など、食事と一緒に与えないとその働きを発揮できません。
つまり、レンジアレンを効果的に与えるには、リンが気になる食事と一緒に与えることです。
食事の回数が3回なら、1日量を3回に分けて与えるのが効果的ということです。
与える時のちょっとしたコツ
ドライフードに与える場合は、粉末なので、フードをぬるま湯で湿らせてからかけて混ぜると、ドライフードにからみやすくなります。
ほぼ無味無臭なので、与えるのに苦労するという心配はしなくても大丈夫でしょう。
愛犬チャコの場合も、療法食、手作り食問わず、食事に混ぜても問題なく食べてくれました。
食事に混ぜると食べてくれないというケースは少ないと思いますが、そんな時は、食後(時間を空けない)に、鶏がらスープに溶かして飲ませるといいかもしれません。
レンジアレン自体の色は茶色あるいは赤褐色ですので、色は赤みその味噌汁みたいになりますが…。
あるいは、小さじ一杯程度のヨーグルトに混ぜるなどして与えることもできます。
ヨーグルトは乳製品なのでリンが気になるという人もいるかもしれませんが、小さじ一杯程度ではリンの量は気にする必要はありません。
知っておきたい注意事項
便の色が黒くなります
主成分の塩化第二鉄は、簡単に言ってしまえば鉄ですので、便として排泄されるまでに酸化するため、便の色が黒くなることがあります。
メーカー的な説明をするとそうなりますが、与えれば便は黒くなると思っていた方がいいです。
健康に問題がある副作用ではありませんが、ビックリしないようにしましょう。
併用には注意する必要がある薬
使用上の注意として、動物用医薬品等と混ぜて使うことは避けるよう明記されているので、基本的には薬と一緒に与えない。
薬は時間を空けて与えます。
食事が胃で消化され小腸へたどり着くのに2時間くらいかかるとされているので、レンジアレンの使用後2時間以上は時間を空けます。
特に、主成分の塩化第二鉄との相互作用の影響で、吸収を阻害されるおそれがある薬があるので、レンジアレンを利用していることは獣医に伝えましょう。
以下の薬は、鉄剤との併用で吸収を阻害されるおそれがある薬です。鉄が主成分のレンジアレンとの併用には注意し、獣医の指示に従いましょう。
- 甲状腺ホルモン製剤
- ニューキノロン系抗菌薬
- テトラサイクリン系抗生物質
ネフガードとの併用は可能だけど、レンジアレンの吸着作用に影響も
こちらも薬と同様で、一緒には与えない。
活性炭が主成分の尿毒症物質の吸着剤であるネフガードとの併用は、吸着作用が減弱するおそれがあるとされています。
ネフガードは、腸肝循環する(胆汁と共に腸と肝臓との間を行き来する)老廃物などの有害物質を腸で吸着・除去し、便と一緒に排出させることで、再び腸管から体内に吸収されることを阻止するものです。
ネフガードは食事の中の物質を吸着するためのサプリではないので、食事と一緒である必要はありません。
レンジアレンは食事と一緒にを与えて、ネフガードは食後2時間くらい空けて与えるなど、時間をずらせば併用はできます。
ただ、腸での吸着では影響があるかもしれません。レンジアレンは胃での吸着能力が高いので、併用する場合はそれで良しとするしかないのかもしれません。
こんな時はレンジアレンを使った方がいい
- 療法食を食べてくれず、以前の食事に戻したら、リンが制限できなくなるのが心配
- 手作りを考えているけど、リンの制限に不安がある、自信がない
- 療法食を食べてもらうためにトッピングなどを利用しているのでリンが心配
- 今食べてくれている療法食ではリンの制限が十分ではなく、かといって食事を変えたら食べてくれなくなるんじゃないかと不安
- 手作りしているけど、今の食事ではリンのコントロールに不安がある、数値が思わしくない
病気そのものを治すことはできませんが、長年連れ添った愛犬のために、飼い主としてできること一つです。あの時、使っていたら…そんな後悔だけはしないでくださいね。
愛犬に少しでも長生きしてもらい、生活の質も維持してあげ、一緒にいられる時間をいつも以上に大事にしてあげてください。
レンジアレンは、きっとあなたと愛犬の大切な時間を支えてくれます。
リファレンス
- 宮川 優一「慢性腎不全時におけるリンのコントロールの重要性 3.吸着剤の投与」動物臨床医学2015 年 24 巻 3 号 p. 108-110.
- King JN, Delport PC, Luus HG,et al.Speranza C.Efficacy and acceptability of the new oral phosphate binder Lenziaren® in healthy cats fed a renal diet.J Vet Pharmacol Ther. 2015 Jun;38(3):278-89.
- King JN, Erasmus HL, Delport PC,et al.Efficacy, acceptability and tolerability of the new oral phosphate binder Lenziaren® in healthy cats fed a standard diet.BMC Vet Res. 2014 Oct 28;10:258.
- Fukagawa M, Kasuga H, Joseph D, Sawata H, Junge G, Moore A, Akiba T.Efficacy and safety of SBR759, a novel calcium-free, iron (III)-based phosphate binder, versus placebo in chronic kidney disease stage V Japanese patients on maintenance renal replacement therapy.Clin Exp Nephrol. 2014 Feb;18(1):135-43.