犬の慢性腎臓病の療法食-タンパク質とリンの制限はどのくらいが適切?

慢性腎臓病の療法食あるいは食事療法では、タンパク質とリンを制限しましょうとよく言われます。

しかし、具体的にどのくらいの量のことなのか?誰も教えてくれませんし、疑問に思いますよね。

療法食でも、どのメーカーもリンやタンパク質を制限しているとは言っていますが、どの程度の制限が必要なのか、目安となるものがないと、療法食を比較することもできません。

ここでは、愛犬チャコの手作り療法食のために調べて、信頼できると判断して個人的に目安としている情報を紹介したい思います。

それを基に、療法食での比較もしやすいように100kcalあたりの量を目安として紹介します。

愛犬の体重ではどのくらいの摂取量を目安にすればいいのか、自動計算もできますので参考にしてください。

面倒だったり、難しく感じる場合は、どのくらいを目安にすればいいのか、結論だけ参考にすればOKです。

100kcalあたりなのはなぜ?
カロリーの違う療法食を愛犬が摂取する量で比較できるからです。
注意
同じ体重なら摂取量は同じですが、愛犬に必要なカロリーによって100kcalあたりの量は変わります。

タンパク質の制限はどれくらいが適切?

タンパク質の制限については研究者の間でも議論がされているため、タンパク質の量はどの位が適切かは決まっていませんし、参考になる情報もわずかです。

タンパク質制限の参考情報1
Topics in Companion Animal Medicineによると、窒素性老廃物と慢性腎臓病の犬における臨床症状を減少させるために、乾物ベースで18%以下、あるいは代謝エネルギー(ME)の9%から16%の食餌でのタンパク質が推奨されています。

100kcalあたり4.6g以下、あるいは100kcalあたり2.6g~4.6gになります。

100kcalあたりへの換算は、DER=1.6×RER=1.6×70kcal×代謝体重(体重の0.75乗)として計算しています。係数1.6は去勢避妊済み成犬の係数です。乾物ベースのエネルギー密度は400kcal/100gとしています。タンパク質の代謝エネルギー(ME)を1g:3.5kcalで計算しています。

タンパク質制限の参考情報2
ペットとして飼われている慢性腎臓病の犬での臨床試験で、予後の改善に有効であることが証明された療法食のタンパク質は、100kcalあたり3.3gです。

100kcalあたりは、栄養組成から算出。エネルギー要求量は、現在、メーカーは1.6×RERで計算しているので、当時も同じとみなします。

早期ステージ(ステージ1、2)

参考情報1ではステージには言及していませんが、FEDIAF、AAFCOの成犬のタンパク質の最小値は100kcalあたり4.5gですので、参考情報1の100kcalあたりの上限4.6gは早期ステージだろう考えられます。

臨床的に証明された栄養のヒルズk/d早期ステージ用(日本未発売、Hill’s Prescription Diet k/d Early Stage Canine)では、100kcalあたり4.2gとなっています。

したがって、100kcalあたり4.6g以下、4.2g程度までが早期ステージ(ステージ1、2)の制限として適切だろうと考えられます。

ステージ3とステージ4

ステージ3ではステージ2以下の制限が必要ということになりますが、その幅はどの位かはわかりません。

参考情報2の療法食は、Journal of Small Animal Practice (2010)に掲載されたレビュー論文で、ステージ3とステージ4で推奨される治療としてグレード1(最も信頼性の高いエビデンス)に位置付けられています。

したがって、ステージ3以降では100kcalあたり3.3g前後は目安として適切だろうと考えられます。

ステージ4では、参考情報1の下限である100kcalあたり2.6g位まで制限が必要になるかもしれませんが、食事(ドライフード)のみで対策するのは現実的ではありません。

食事で制限できても愛犬が食事として受け入れてくれない可能性も高くなります。

愛犬が食べてくれる食事で窒素性老廃物(尿毒症性物質あるいは尿毒症毒素)の対策をするのが現実的でしょう。

タンパク質を制限する目的は、窒素性老廃物(尿毒症性物質あるいは尿毒症毒素)を減らし、尿毒症症状を減少させ、生活の質を維持するためです。

タンパク質の制限によって生活の質が低下してしまうのは、制限の目的から外れてしまので避けるべきです。

そのため、制限には下回るべきではない下限があります。

それがNRCの最小要求量(セーフティマージンのない最小値)で、100kcalあたり2.0gです。

エネルギー量は代謝体重あたり130kcalで計算されているので、代謝体重あたり112kcal(1.6×RER)に換算すると100kcalあたり2.3gになります。

これが制限の限界です。

これを下回ると、タンパク質(必須アミノ酸)が不足する可能性が高く、筋肉(タンパク質)を消費するようになり、老廃物がかえって増えてしまいます。筋肉量が減り、生活の質も低下してしまいます。

参考情報1の100kcalあたりの下限は2.6gですので、100kcalあたり2.3g~2.6g程度がタンパク質制限の下限だろうと考えられますが、ギリギリを目安にするのはリスクがあるので、100kcalあたり2.6gが下限としては適切でしょう。

エネルギー要求量別の適切と考えられる食事でのタンパク質量の目安

以上を踏まえて、参考情報から適切と考えられる食事でのタンパク質量をまとめると…

標準的な成犬(適度な活動量の中年の成犬、去勢・避妊済みの成犬

愛犬のエネルギー要求量を、FEDIAF栄養ガイドラインの計算式110kcal×代謝体重、またはDER=1.6×RER=112kcal×代謝体重で計算して給与する場合です。両方を含めた目安になっています。

療法食の給与量目安となるエネルギー量の多くは上の計算式で計算されています。

  • ステージ1、2では、100kcalあたり4.2g~4.7g程度
  • ステージ3以降では、100kcalあたり3.4g前後
  • タンパク質の制限は100kcalあたり2.6gを下回らないこと

シニア犬

愛犬のエネルギー要求量を、FEDIAF栄養ガイドラインの計算式95kcal×代謝体重、またはDER=1.4×RER=98×代謝体重で計算して給与する場合です。両方を含めた目安になっています。

  • ステージ1、2では、100kcalあたり4.9g~5.4g程度
  • ステージ3以降では、100kcalあたり3.9g前後
  • タンパク質の制限は100kcalあたり3.0gを下回らないこと

同じ体重なら摂取量は同じです。少ないカロリー(シニア)で同じ摂取量を満たすには、カロリー当たりの量が増えます。逆に多い場合は、カロリーあたりの量が減ります。

リン制限はどのくらいが適切?

リン制限の参考情報1
高リン食(1.4%)との比較でリン制限の有効性が示された研究でのリン量は、乾物量ベースでリン0.4%、100kcalあたり100mgになります。
リン制限の参考情報2
実際にペットとして飼われている慢性腎臓病の犬での臨床試験において、予後の改善に有効であることが確認された療法食では、リンは0.28%(乾物量)、100kcalあたり67mgになります。

早期ステージ(ステージ1、2)

AAFCO2016、FEDIAFのリンの最小値は100kcalあたり100mgです。

参考情報1は100kcalあたり100mgで同じになっています。

維持食の最小推奨レベルと同じですので、制限としては緩やかです。

臨床的に証明された栄養のヒルズk/d早期ステージ用(日本未発売、Hill’s Prescription Diet k/d Early Stage Canine)では、
乾物量で0.34%、100kcalあたり80mgになっています。

早期ステージ(ステージ1、2)では、100kcalあたり80mg~100mgが目安としては適切だろうと考えられます。

ステージ3以降

臨床試験での療法食(参考情報2)は100kcalあたり67mgで有効性を証明しています。

この臨床試験での療法食は、Journal of Small Animal Practice (2010)に掲載されたレビュー論文で、ステージ3とステージ4で推奨される治療としてグレード1(最も信頼性の高いエビデンス)に位置付けられています。

タンパク質と同じように、ステージ4では、ドライフードのみで対策するのは現実的ではありません。

食事で制限できても愛犬が食事として受け入れてくれない可能性があります。

なるべくリンが少なく、愛犬が食べてくれる療法食で、リン吸着剤を使って対策するのが現実的です。

エネルギー要求量別の適切と考えられる食事でのリン量の目安

以上を踏まえて、参考情報から適切と考えられる食事でのリン量をまとめると…

標準的な成犬(適度な活動量の中年の成犬、去勢・避妊済みの成犬

愛犬のエネルギー要求量を、FEDIAF栄養ガイドラインの計算式110kcal×代謝体重、またはDER=1.6×RER=112kcal×代謝体重で計算して給与する場合です。両方を含めた目安になっています。

療法食の給与量目安となるエネルギー量の多くはこの計算式で計算されています。

  • ステージ1、2では100kcalあたり80mg~100mg程度
  • ステージ3以降では100kcalあたり68mg以下

シニア犬

愛犬のエネルギー要求量を、FEDIAF栄養ガイドラインの計算式95kcal×代謝体重、またはDER=1.4×RER=98×代謝体重で計算して給与する場合です。両方を含めた目安になっています。

  • ステージ1、2では100kcalあたり91mg~117mg程度
  • ステージ3以降では100kcalあたり79mg以下

同じ体重なら摂取量は同じです。少ないカロリー(シニア)で同じ摂取量を満たすには、カロリー当たりの量が増えます。逆に多い場合は、カロリーあたりの量が減ります。

注意
療法食や目安に関わらず、現在の食事での制限で改善しない場合は、対策が必要になるということは忘れずに。

愛犬の体重での摂取量の目安

代謝体重(kg BW0.75)あたりのタンパク質とリン量の目安から愛犬の体重での目安を計算します。愛犬の体重を入力するだけで自動計算されます。

体重1kgあたりでの計算とは違うので注意してください。

体重1kgあたりでは体重が2倍ならカロリーもタンパク質も2倍になってしまいますが、エネルギー量と栄養量は体重に正比例ではありません。体重の0.75乗(代謝体重)に比例します。

注意
療法食や目安に関わらず、現在の食事での制限で改善しない場合は、対策が必要になるということは忘れずに。

愛犬のエネルギー要求量の計算

FEDIAF栄養ガイドラインの成犬、シニアでのエネルギー要求量が以下のページで自動計算できます。

愛犬(成犬)の1日に必要なカロリーを自動計算

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