【フォルツァ10】リナールアクティブ(ウェット)・ラムは療法食としてどうなの?

犬の慢性腎臓病の療法食である【フォルツァ10】リナールアクティブ(ウェット・アルミトレイ)・ラムは療法食としてどうなの?

メーカーや販売店のHPを見ても同じことが載っているだけで、それが療法食としてどうなのか、わからないですよね。

ウェットフードはドライフードよりもメーカーによる違いが大きく、どんな療法食なのかを知ることは、あなたの愛犬の予後すら左右しかねない重要なことです。

この記事では、慢性腎臓病の愛犬を持つ飼い主がフォルツァ10・リナールアクティブ・ラムを誰よりも詳しく解説します。

あなた自身が、なるべく客観的にどんな療法食なのか理解できるように、分析値や原材料から療法食としての実力を丸裸にしてみました。

警告
療法食として制限が不十分なため、給与量目安で与えることはできません。

食事療法の最重要項目からレビューしてみた

慢性腎臓病の療法食あるいは食事療法では、量を制限した高品質なタンパク質、リンの制限、この二つが栄養学的に最も重要です。

しかし、愛犬の状態やステージ(進行度)によってどの程度制限すべきかは変わってきます。

そのため、療法食として与え続けるには、先を見越した長期的な視点が必要です。

ここでは、どのステージに適しているのか、参考になるよう、最重要項目のタンパク質とリンでレビューしてみます。

もはや療法食とは言えず、療法食として愛犬にこれだけを与えてはいけない

フォルツァ10・リナールアクティブ・ラムは、タンパク質、リンがともに制限が不十分です。

そのため、もはや療法食とは言えません。

メーカーは「単独の総合栄養食として」と記載してますが、愛犬の療法食として給与量目安などで与えることはできません。

イタリア公式HPの給与量目安で与える場合、タンパク質とリンは早期ステージには適していますが、明らかにエネルギー不足です。

安静時エネルギー要求量を下回るケースもあるため、療法食としてこれだけを与えることはできません。

コーギーのように中型犬以上では、内容量や費用的にアルミトレイのウェットフードを食事として必要なカロリーの全量を賄うことはないと思いますが、小型犬などでは要注意です。

食材として見た場合、低リン食材と言えますので、手作りなど食事療法の食材として栄養補助的に使ったり、ドライフードの食いつき対策など食事の一部として使うべきウェットフードです。

慢性腎臓病の愛犬の飼い主として、最重要項目のタンパク質とリンでレビューすると結論としては以上のようになります。

では、具体的にはどうなのか?

まずは、フォルツァ10・リナールアクティブ・ラムの基本的な情報を確認してみます。

基本情報

フォルツァ10・リナールアクティブ・ラムは体重30kg以下の犬が対象です。

原材料

煮汁、ラム、チキン、米、ミネラル類、ギニアアブラヤシ油、セイヨウタンポポ、ヤナギタンポポ、ハギ、カシアケイヒガム、グアーガム、デンプン、キサンタンガム、アメリカンクランベリー、ベアベリー、グルコース、ビタミンD3

イタリア公式HPで原材料を見ると、「煮汁、ラム、チキン」にあたる部分が「meat and meat by-products (lamb 14%, chicken 10%)」となっています。

肉と肉副産物という意味なので、正肉だけではないことがわかります。副産物は悪い原材料ではありません。

原産国はアイスランドですが、メーカーはイタリアです。EU圏のペットフードは、動物性原材料は、獣医の検査をパスした人間の消費に適合する動物からの原材料でなければいけないので、品質は心配する必要はありません。

エネルギー

  • 代謝エネルギー(ME):84kcal/100g
  • DERの計算式:84kcal~111kcal×代謝体重

DER(1日あたりのエネルギー要求量)の計算式は、給与量の目安を見積もる時に、メーカーが採用しているであろう計算式です。

メーカーは愛犬の1日に必要なエネルギー量をどう計算して、給与量の目安としているのか、ということです。

給与量目安で与えることはできませんが、以下は参考までに。

メーカーのイタリア公式HPでは、給与量目安のエネルギー要求量の見積もりが低く、安静時エネルギー要求量を下回る給与量もあり不適切ですが、日本では修正されています。

フォルツァ10・リナールアクティブ・ラムは84kcal(体重1kgの場合のみ)~111kcal×代謝体重で計算されています。

FEDIAF栄養ガイドラインの計算式のシニアは95kcal×代謝体重、係数を使う計算式なら、DER=1.4×RER=98kcal×代謝体重になります。

FEDIAF栄養ガイドラインの計算式では、110kcal×代謝体重(体重の0.75乗)が、標準的な成犬(適度な活動量の中年の成犬)のエネルギー要求量です。

係数を使う計算式なら、避妊去勢済みの成犬の係数1.6相当で、1.6×RER=1.6×70kcal×代謝体重(体重の0.75乗)=112kcal×代謝体重となります。

100kcalあたりの栄養素

栄養素 100kcalあたり
タンパク質 7.1g
リン 155mg
ナトリウム 71mg
カリウム 238mg
脂質 5.7g
炭水化物(NFE) 4.5g
EPA+DHA 1547mg(オメガ3合計)※

※日本のHPには記載がないのでイタリア公式HPの成分値で計算。日本の保証分析値の成分値とイタリアの成分値では違いがあるので参考程度に。その他の成分値は日本HPのものを基にしています。。

基本的な情報を確認したので、次はそれをもとに具体的にどんな療法食なのか、ステージごとのタンパク質とリン制限の目安と比べて、療法食としての実力を詳しく見てみましょう。

なお、タンパク質とリン制限の目安は、愛犬チャコの手作り療法食のために調べた信頼できる情報を基に、制限として適切と考えられるものを療法食の比較がしやすいようにまとめたものです。

詳しくは以下の記事を参照してください。

犬の慢性腎臓病の療法食-タンパク質とリンの制限はどのくらいが適切?

タンパク質はどうなっているのか?

CKDの食事療法では、タンパク質は、量は制限しつつも、良質なタンパク質が求められます。

安静時エネルギー要求量で与える場合は早期ステージに適している

フォルツァ10・リナールアクティブ・ラムのタンパク質は、100kcalあたり7.1gです。

比較表掲載の療法食(ウェット)のタンパク質は、100kcalあたり2.4g(最小)~9.8g(最大)です。

製品100gあたり6gです。

エネルギー要求量別ステージごとのタンパク質の目安

愛犬のエネルギー要求量のすべてを、フォルツァ10・リナールアクティブ・ラムだけで賄う給餌はできません。

標準的な成犬(適度な活動量の中年の成犬、去勢・避妊済みの成犬)

  • ステージ1、2では、100kcalあたり4.2g~4.7g程度
  • ステージ3以降では、100kcalあたり3.4g前後
  • タンパク質の制限は100kcalあたり2.6gを下回らないこと

愛犬のエネルギー要求量を、FEDIAF栄養ガイドラインの計算式110kcal×代謝体重、またはDER=1.6×RER=112kcal×代謝体重で計算して給与する場合です。

シニア犬

  • ステージ1、2では、100kcalあたり4.9g~5.4g程度
  • ステージ3以降では、100kcalあたり3.9g前後
  • タンパク質の制限は100kcalあたり3.0gを下回らないこと

愛犬のエネルギー要求量を、FEDIAF栄養ガイドラインの計算式95kcal×代謝体重、またはDER=1.4×RER=98kcal×代謝体重で計算して給与する場合です。

安静時エネルギー要求量で与える場合

  • ステージ1、2では、100kcalあたり7.4g程度
  • ステージ3以降では、100kcalあたり5.3g前後
  • タンパク質の制限は100kcalあたり4.1gを下回らないこと

安静時エネルギー要求量(RER)は、70kcal×代謝体重(体重の0.75乗)です。

安静時エネルギー要求量(Resting Energy Requirements)は、体温維持に基礎代謝以外のエネルギーを必要としない温和な環境(熱的中性域)で、絶食をしていない状態で、非活動時のエネルギー要求量のことです。例:入院中や食事と排泄時以外は寝ている状態など

解説

フォルツァ10・リナールアクティブ・ラムのタンパク質量は安静時エネルギー要求量で与える場合には、早期ステージに適しています。

その他のエネルギー要求量や給与量目安で与える場合は、タンパク質が明らかに高く、ステージ3以降では2倍近くあり、療法食として適切ではありません。

食事療法の食材として栄養補助的に使うことはできます。

良質なタンパク質を使っている療法食

アミノ酸のバランス(アミノ酸スコア)が良いものは、愛犬の体での利用効率が良く、余分な老廃物となるものが少ないとされます。

一般に、大豆などを除く植物性のタンパク質は、動物性のタンパク質に比べ栄養的価値は低いとされます。

肉や魚、卵、大豆などはアミノ酸スコアが良く、「良質なたんぱく質」です。

主なタンパク質源は、ラム、チキンです。

良質なタンパク質である動物性タンパク質のみを使った療法食です。

リンはどうなっているのか?

安静時エネルギー要求量で与える場合は早期ステージに適している

フォルツァ10・リナールアクティブ・ラムのリンは、100kcalあたり155mgです。

比較表掲載の療法食(ウェット)のリンは、100kcalあたり43mg(最小)~244mg(最大)です。

製品100gあたり130mgになります。

エネルギー要求量別ステージごとのリン制限の目安

愛犬のエネルギー要求量のすべてを、フォルツァ10・リナールアクティブ・ラムだけで賄う給餌はできません。

標準的な成犬(適度な活動量の中年の成犬、去勢・避妊済みの成犬

  • ステージ1、2では100kcalあたり80mg~100mg程度
  • ステージ3以降では100kcalあたり68mg以下

愛犬のエネルギー要求量を、FEDIAF栄養ガイドラインの計算式110kcal×代謝体重、またはDER=1.6×RER=112kcal×代謝体重で計算して給与する場合です。

シニア犬

  • ステージ1、2では100kcalあたり91mg~117mg程度
  • ステージ3以降では100kcalあたり79mg以下

愛犬のエネルギー要求量を、FEDIAF栄養ガイドラインの計算式95kcal×代謝体重、またはDER=1.4×RER=98kcal×代謝体重で計算して給与する場合です。

安静時エネルギー要求量で与える場合

  • ステージ1、2では、100kcalあたり160mg以下
  • ステージ3以降では、100kcalあたり109mg以下

安静時エネルギー要求量(RER)は、70kcal×代謝体重(体重の0.75乗)です。

解説

フォルツァ10・リナールアクティブ・ラムは、安静時エネルギー要求量で与える場合は、早期ステージには適切です。

それ以外のエネルギー要求量や給与量目安で与える場合は、リンが明らかに高く、ステージにかかわらず療法食として適切ではありません。

食材として見た場合、低リン食材と言えますので、栄養補助的に使うことはできます。

愛犬の状態次第では重要になってくる栄養素もチェック

愛犬の検査結果や症状から獣医の指示がある場合は、制限が必要になる栄養素についてもどうなっているのか、知っておいた方がいいでしょう。

ナトリウム・カリウム

ナトリウムは100kcalあたり71mgです。製品100gあたり60mgです。

比較表に掲載の療法食(ウェット)のナトリウムは、100kcalあたり24mg(最小)~142mg(最大)です。

カリウムは100kcalあたり238mgです。製品100gあたり200mgです。

比較表に掲載の療法食(ウェット)のカリウムは、100kcalあたりで107mg(最小)~270mg(最大)です。

ナトリウムとカリウムについては、どの程度が慢性腎臓病の愛犬にとって適切なレベルなのかは正直わかりません。

実際には、愛犬の状態を検査でモニタリングしながら対処することになると思います。

参考情報
臨床研究で予後の改善に有効であることが確認された療法食のナトリウムとカリウムは

  • ナトリウム:100kcalあたり40.5mg
  • カリウム:100kcalあたり83.3mg
比較表に掲載している療法食では、カリウムはすべてこれよりも多くなっています。ヒルズも現在は研究当時のものよりも多くなっているので、カリウムに関しては参考にならないかもしれません。

脂質

脂質は製品100gあたり4.8g、100kcalあたり5.7gです。

比較表掲載の療法食(ウェット)の脂質は、100kcalあたり3.6g(最小)~9.5g(最大)です。

脂質が低い療法食ですが、脂質の制限を指示されている場合は、愛犬の療法食として与えることは出来ません。

炭水化物(可溶性無窒素物:NFE)

炭水化物は、製品100gあたり3.8g、100kcalあたり4.5gです。

※炭水化物はメーカーが公表しているもの以外は差し引き法による推定です。ドッグフード全体から、保証分析値の水分、タンパク質、脂質、灰分、食物繊維(粗繊維)を差し引いたもの(可溶性無窒素物:NFE)を炭水化物として推定しています。

食事療法にはほぼ必須!愛犬をサポートする成分はどうなっている?

愛犬にとってプラスの要素、つまり腎機能をサポートしてくれることが研究で示されている成分です。

これらはサプリメントなどで補うことができるので、療法食での優先度は高くありませんが、食事療法にはほぼ必須と考えた方がいいでしょう。

EPA+DHA

EPAとDHAの供給源となる原材料は使われていません。

成分値は、EPAとDHAの分析値、オメガ3脂肪酸の合計もありません。

イタリア公式ではオメガ3脂肪酸の分析値が掲載されています。

それによれば、オメガ3脂肪酸は100kcalあたり1547mgですが、EPAとDHAの供給源がないので、オメガ3脂肪酸はEPAとDHA以外というこになります。

日本語の原材料名では、オメガ3脂肪酸(α-リノレン酸)の主な供給源があるようには見えませんが、イタリア公式HPの原材料名ではラムやチキンには副産物も含まれます。

鶏由来の脂には少量ですがα-リノレン酸が含まれています。

EPA+DHAの慢性腎臓病向け用量
  • 代謝体重(kgBW0.75)あたりEPA+DHAで140mg
  • 100kcalあたりだとEPA+DHAは105mg~127mgになります。

腸内環境を整える働きがある成分

プレバイオティクスの供給源として使われているわけではないですが、グアーガムには水溶性食物繊維(粘りの成分)が含まれています。

グアーガムは、食品添加物として認められていて、増粘剤(粘り気を増す)として様々な食品に使われています。

水に溶かすと少量でも非常に高粘度になる成分で、原材料に煮汁があることから、とろみを出す(ゲル状にする)ために使用されています。

抗酸化物質

リナールアクティブ(ラム)では、ドライフード同様に、フィトケミカル成分(植物栄養素)に抗酸化作用があるアメリカンクランベリー、 セイヨウタンポポ、ベアベリーが使用されています。

その他原材料、療法食に特徴的な成分等

原材料のギニアアブラヤシ油は、食用油にも使われるパーム油のことです。

マイクロカプセル製法のために使用されています。

メーカーによると、「ギニアアブラヤシ油の小さな球が栄養素を包み込み、自然劣化現象から原料の保護を行いより段階的に吸収できるよう作られています」

油であるのでエネルギー源にもなります。


セイヨウタンポポ、ヤナギタンポポ、ハギ、クランベリー、ベアベリーといったフィトケミカル成分(植物栄養素)は、伝統的にメディカルハーブや民間医療で利尿作用や尿路系へ使用されてきたものです。

日本でもウワウルシ(原材料名のベアベリー)は、生薬や漢方として医薬品にも使用されます。

利尿作用がある植物成分が複数使用されていますので、ミネラルバランスに影響を与える可能性があります(尿として排泄される量に影響)。配合されている量が適切かどうかは、残念ながらわかりませんでした。

利尿作用のある植物が複数使われた食事を愛犬に与えてもよいかどうかは獣医に相談した方がいいでしょう。


原材料のカシアケイヒガム、グアーガム、キサンタンガムは、増粘多糖類です。液体状の原材料(煮汁)にとろみを加えるために使われます。

カシアケイヒは漢方で桂皮(ケイヒ)と呼ばれるもので、食品のシナモンのことです。

カシアケイヒガムは、カシアケイヒ由来の、粘度を高める物質=ガム、を抽出したものと推測できます。

シナモンの主な成分にクマリンという毒性がある成分があります。過剰摂取すると肝機能障害を招くことが知られています。

カシアケイヒ(桂皮、シナモン)とカシアケイヒガムは全く同じではないでしょうが、同じ原料からできているので、クマリンが含まれているかもしれませんし、それがどの程度なのかもわかりません。

ちなみに、ヒトの場合、欧州食品安全機関( EFSA )はクマリンの毒性を考慮し、クマリンのヒトの最大推奨耐容一日摂取量(TDI)を0.1 mg/kg体重としています(シナモンとしての量ではありません)。犬の場合の摂取量はわかりませんでした。


以上でフォルツァ10・リナールアクティブ・ラムの説明は終了です。非常に長くなりましたね。お疲れ様でした。

お大事になさってください。