アニモンダ・ニーレン400g缶(ウエット)は療法食としてどうなの?

犬の慢性腎臓病の療法食であるアニモンダ・ニーレン400g缶(ウエット)は療法食としてどうなの?

メーカーや販売店のHPを見ても同じことが載っているだけで、それが療法食としてどうなのか、わからないですよね。

この記事では、慢性腎臓病の愛犬を持つ飼い主がアニモンダ・ニーレン400g缶(ウエット)を誰よりも詳しく解説します。

注意
これだけを食事として長期間継続して与えた場合、脂質過多が原因の病気を引き起こす可能性があります。獣医に脂質を控えめにするよう指示されている場合は、絶対に食事として与えてはいけません。

脂質過剰!食事として400g缶のみを与えるのは要注意!

慢性腎臓病の療法食あるいは食事療法では、量を制限した高品質なタンパク質、リンの制限、この二つが栄養学的に最も重要です。

どのステージに適しているのか、参考になるよう、最重要項目のタンパク質とリンでレビューするところですが…

アニモンダ・インテグラプロテクト・ニーレン400g缶【牛】【鶏】は、もはや食事として成立していません。

食事療法食として、給与量の目安で愛犬に与えることはおすすめ出来ません。

愛犬の食事としてこれだけを与えるのは避けるべきです。

一番の問題は、エネルギー源の偏りにあります。グレインフリー(穀物不使用)にこだわったが故の最悪のケースと言えるでしょう。

ニーレン400g缶【牛】【鶏】は、食事としては異常なほど脂質が過剰です。

一言で言い表すなら、肉とポテトの油漬け(食物繊維入り)、そんな缶詰です。

牛、鶏ともに脂質の量が非常に多いウェットフードで、DM(乾燥重量)で計算すると、脂質は【牛】が47.8%、【鶏】は55%もあります。水分を除いた栄養素のおよそ半分は脂質ということになります。

手作りの食材として見れば使い道はありそうですが、もはや単体で愛犬の食事として成立していません。

給与量の目安や愛犬の必要カロリーで与えた場合、食事としてありえない量の脂質を愛犬は摂取することになります。

体重7kgの犬でちょうど1缶=400gが給餌量となっています。

計算してみると、【牛】【鶏】ともに脂肪11%ですから、体重7kgの犬の脂質摂取量は44gにもなります。毎日バターを44g摂るのと同じです。

給与量でのカロリーのうち70%以上は脂質のカロリーになります。

もし愛犬に与える場合は、食いつき対策のために食事の一部としてのみ与えた方がいいでしょう。

本来なら、輸入元や販売店がどのように与える製品かを説明すべきですが、輸入元や販売店は何も説明せず、ただ療法食として販売しているので注意してください。

基本情報

療法食は制限する栄養素があるので仕方ないですが、アニモンダは、通常の維持食も総合栄養食(Complete Pet Food)ではありません。

つまり、どれ一つして分析試験や給与試験を通して、客観的に消費者に栄養バランスを証明した商品がありません。何を言っても客観的な信頼性に欠け、自称に過ぎません。

その点について日本の公式サイトのよくある質問で回答(https://animonda.co.jp/animonda-abc/)していますが、苦しい言い訳でしかありません。

ドイツ製ペットフードに総合栄養食の概念はないと言っていますが、同じドイツ製のハッピードッグは総合栄養食を作っています。

そもそもEU圏なので、欧州議会および理事会規則(Regulation (EC) No 767/2009)によって定義がされています。FEDIAF栄養ガイドラインはComplete Pet Foodのための基準です。

また、アニモンダ・ニーレンは、グレインフリー(穀物不使用)の療法食です。

グレインフリーは、健康志向の飼い主にもっともらしく聞こえて、飼い主の愛犬家としての満足感を満たせる、都合の良いマーケティングです。

穀物にアレルギーや不耐症がある犬にはメリットですが、それ以外はグレインフリーであることに科学的なメリットはありません。

タンパク質の制限が必要な慢性腎臓病の犬にとって、主なエネルギー源として炭水化物(糖質)は重要になります。グレインフリーはその供給源を制限することになります。

原材料

アニモンダ・ニーレン400g缶【牛】

肉類(牛、鶏)、野菜(ポテト)、野菜副産物、油脂類(キャノーラオイル)、ミネラル、添加物/1kgあたり(ビタミンA 2000IU、ビタミンD3 200IU、ヨウ素0.75mg、マンガン3mg、亜鉛15mg)

アニモンダ・ニーレン400g缶【鶏】

肉類(鶏、豚)、野菜(ポテト)、野菜副産物、油脂類(キャノーラオイル)、ミネラル、添加物/1kgあたり(ビタミンA 2000IU、ビタミンD3 200IU、ヨウ素0.75mg、マンガン3mg、亜鉛15mg)

ドライフードとは表示の仕方を変えているようです。

牛と鶏との違いは肉類の原材料が違うだけで、他はすべて同じです。

原材料の野菜副産物は、公式サイトのよくある質問での回答によると、野菜副産物=イヌリンとセルロースです。成分を表すなら直接そう表示すればいいんじゃないかと思いますが…。わかりにくいですね。

公式サイトではイヌリンとセルロースを水溶性食物繊維として説明していますが、セルロースは水溶性ではなく、不溶性です。水には溶けません。簡単に言うと植物の繊維質の主成分です。

エネルギー

  • 【牛】代謝エネルギー(ME):127kcal/100g
  • 【鶏】代謝エネルギー(ME):116kcal/100g

脂質はどちらも11%です。100g中の脂質は11gになります。脂質の代謝エネルギー(ME)は1gあたり8.5kcalです。

100g中の脂質のエネルギー量は、11g×8.5kcal=93.5kcal

ニーレン400g缶【牛】では、127kcal/100gのうち脂質のエネルギーは73.6%を占めます。

ニーレン400g缶【鶏】では、116kcal/100gのうち脂質のエネルギーは80.6%を占めます。

これが栄養補助のためのウェットフードとしてではなく、何の説明もなく療法食(食事)として販売されています。

100kcalあたりの栄養素

栄養素 【牛】 【鶏】
タンパク質 4.3g 3.4g
リン 79mg 86mg
ナトリウム 142mg 138mg
カリウム 213mg 224mg
脂質 8.7g 9.5g
炭水化物(NFE) 3.2g 2.3g
EPA+DHA 非公表 非公表

基本的な情報は以上です。

本来ならタンパク質とリン制限の目安と比べて具体的に療法食としての実力を詳しく見るところですが、これだけを食事として与えることはできないので、これ以降はすべて参考情報とします。

なお、タンパク質とリン制限の目安は、愛犬チャコの手作り療法食のために調べた情報を基に、制限の目安として適切と考えられるものを、療法食の比較がしやすいようにまとめたものです。

詳しくは以下の記事を参照してください。

犬の慢性腎臓病の療法食-タンパク質とリンの制限はどのくらいが適切?

タンパク質はどうなっている?(参考情報)

CKDの食事療法では、タンパク質は、量は制限しつつも、良質なタンパク質が求められます。

100kcalあたりのタンパク質量(参考情報)

  • ニーレン400g缶【牛】:100kcalあたり4.3g
  • ニーレン400g缶【鶏】:100kcalあたり3.4g

比較表掲載の療法食(ウェット)のタンパク質は、100kcalあたり2.5g(最小)~9.8g(最大)です。

エネルギー要求量別ステージごとのタンパク質の目安

どちらのエネルギー要求量の場合も、アニモンダ・ニーレン400g缶のみを食事として与えることはできません。

標準的な成犬(適度な活動量の中年の成犬、去勢・避妊済みの成犬)

  • ステージ1、2では、100kcalあたり4.2g~4.7g程度
  • ステージ3以降では、100kcalあたり3.4g前後
  • タンパク質の制限は100kcalあたり2.6gを下回らないこと

愛犬のエネルギー要求量を、FEDIAF栄養ガイドラインの計算式110kcal×代謝体重、またはDER=1.6×RER=112kcal×代謝体重で計算して給与する場合です。

シニア犬

  • ステージ1、2では、100kcalあたり4.9g~5.4g程度
  • ステージ3以降では、100kcalあたり3.9g前後
  • タンパク質の制限は100kcalあたり3.0gを下回らないこと

愛犬のエネルギー要求量を、FEDIAF栄養ガイドラインの計算式95kcal×代謝体重、またはDER=1.4×RER=98kcal×代謝体重で計算して給与する場合です。

良質なタンパク質源が使われている

アミノ酸のバランス(アミノ酸スコア)が良いものは、愛犬の体での利用効率が良く、余分な老廃物となるものが少ないとされます。

一般に、大豆などを除く植物性のタンパク質は、動物性のタンパク質に比べ栄養的価値は低いとされます。

肉や魚、卵、大豆などはアミノ酸スコアが良く、「良質なたんぱく質」です。

主なタンパク質源は、【牛】が肉類(牛・鶏)、【鶏】が肉類(鶏・豚)です。

良質なタンパク質源である動物性原材料のみを使っている療法食です。

EU圏のペットフードは、動物性原材料は、獣医の検査をパスした人間の消費に適合する動物からの原材料でなければいけないので、品質は心配する必要はありません。

リンはどうなっているのか?(参考情報)

リンの制限は、慢性腎臓病の進行を遅らせることが示されているため、食事療法では最も重要な栄養素です。

100kcalあたりのリン量(参考情報)

  • ニーレン400g缶【牛】:100kcalあたり79mg
  • ニーレン400g缶【鶏】:100kcalあたり86mg

比較表掲載の療法食(ウェット)のリンは、100kcalあたり43mg(最小)~244mg(最大)です。

エネルギー要求量別ステージごとのリン制限の目安

どちらのエネルギー要求量の場合も、アニモンダ・ニーレン400g缶のみを食事として与えることはできません。

標準的な成犬(適度な活動量の中年の成犬、去勢・避妊済みの成犬

  • ステージ1、2では100kcalあたり80mg~100mg程度
  • ステージ3以降では100kcalあたり68mg以下

愛犬のエネルギー要求量を、FEDIAF栄養ガイドラインの計算式110kcal×代謝体重、またはDER=1.6×RER=112kcal×代謝体重で計算して給与する場合です。

シニア犬

  • ステージ1、2では100kcalあたり91mg~117mg程度
  • ステージ3以降では100kcalあたり79mg以下

愛犬のエネルギー要求量を、FEDIAF栄養ガイドラインの計算式95kcal×代謝体重、またはDER=1.4×RER=98kcal×代謝体重で計算して給与する場合です。

愛犬の状態次第では重要になってくる栄養素もチェック(参考情報)

愛犬の検査結果や症状から獣医の指示がある場合は、制限が必要になる栄養素についてもどうなっているのか、知っておいた方がいいでしょう。

ナトリウム・カリウム

ナトリウムは…

  • ニーレン400g缶【牛】は、100kcalあたり142mgです。
  • ニーレン400g缶【鶏】は、100kcalあたり138mgです。

ウェットでは最もナトリウム量が多くなっています。

比較表に掲載の療法食(ウェット)のナトリウムは、100kcalあたり24mg(最小)~142mg(最大)です。

カリウムは…

  • ニーレン400g缶【牛】は、100kcalあたり213mgです。
  • ニーレン400g缶【鶏】は、100kcalあたり224mgです。

比較表に掲載の療法食(ウェット)のカリウムは、100kcalあたり107mg(最小)~270mg(最大)です。

ナトリウムとカリウムについては、どの程度が慢性腎臓病の愛犬にとって適切なレベルなのかは正直わかりません。

実際には、愛犬の状態を検査でモニタリングしながら対処することになると思います。

参考情報
臨床研究で予後の改善に有効であることが確認された療法食のナトリウムとカリウムは

  • ナトリウム:100kcalあたり40.5mg
  • カリウム:100kcalあたり83.3mg

比較表に掲載している療法食では、カリウムはすべてこれよりも多くなっています。ヒルズも現在は研究当時のものよりも多くなっているので、カリウムに関しては参考にならないかもしれません。

脂質

  • ニーレン400g缶【牛】は製品100gあたり11g、100kcalあたり8.7gです。
  • ニーレン400g缶【鶏】は製品100gあたり11g、100kcalあたり9.5gです。

比較表掲載の療法食(ウェット)の脂質は、100kcalあたり2.6g(最小)~9.5g(最大)です。

400g缶は他の療法食(ウェット)と比べ、牛、鶏ともに脂質の量が非常に多いウェットフードです。

脂質の割りにはリンが高いので、脂肪の多い肉(リンが少ない)による脂質ではなく、脂質の多くは、キャノーラオイルによるものと予想できます。

グレインフリーにしているせいか、エネルギー源が脂質に偏りすぎています。

乾燥重量(DM)の方がピンと来る方もいると思うので、DMで計算すると、脂質は【牛】が47.8%、【鶏】は55%にもなります。

慢性腎臓病の療法食は、タンパク質を制限するので、エネルギー源として脂質の割合が高めになる傾向がありますが、ニーレン400g缶【牛】【鶏】はあまりにも過剰です。

給与量目安で与えた場合、食事としてありえない量の脂質を摂取することになります。

脂質を気にする必要のない犬も、下痢や便がゆるくなるなどの症状が出るかもしれません。

炭水化物(可溶性無窒素物:NFE)

炭水化物は、メーカー分析値(窒素除外抽出物)です。

  • ニーレン400g缶【牛】は製品100gあたり4.1g、100kcalあたり3.2gです。
  • ニーレン400g缶【鶏】は製品100gあたり2.7g、100kcalあたり2.3gです。

※炭水化物はメーカーが公表しているもの以外は差し引き法による推定です。窒素除外抽出物とは、可溶性無窒素物(nitrogen free extract : NFE)のことで、当サイトが炭水化物として推定しているものと全く同じです。

食事療法にはほぼ必須!愛犬をサポートする成分はどうなっている?(参考情報)

愛犬にとってプラスの要素、つまり腎機能をサポートしてくれることが研究で示されている成分です。

これらはサプリメントなどで補うことができるので、療法食での優先度は高くありませんが、食事療法にはほぼ必須と考えた方がいいでしょう。

EPA+DHA

EPAとDHAの供給源となる原材料はニーレン400g缶【牛】、【鶏】ともに使用されていません。

成分値も公表されていません。

EPA+DHAの慢性腎臓病向け用量
  • 代謝体重(kgBW0.75)あたりEPA+DHAで140mg
  • 100kcalあたりだとEPA+DHAは105mg~127mgになります。

腸内環境を整える働きがある成分

ニーレン400g缶【牛】、【鶏】では、野菜副産物のイヌリンがプレバイオティクスの供給源になります。

イヌリンは水溶性食物繊維で、善玉菌のエサとして善玉菌を増やすのに役立ちます。

抗酸化物質

必須栄養素であるビタミンA、E以外に、特に抗酸化物質の供給源としての原材料はありません。

その他原材料、療法食に特徴的な成分等

キャノーラオイルは、オメガ6脂肪酸のリノール酸と、オメガ3脂肪酸のα-リノレン酸の供給源とエネルギー源になります。ビタミンEも含まれます。

欧米では遺伝子組み換えの品種(菜種)が原料に使われるため懸念する人もいますが、その影響はわかっていません。

使われている原材料のわりに栄養添加剤(ビタミンやミネラル、アミノ酸)が少ない印象で、アニモンダは製造販売するすべての商品が総合栄養食ではありませんので、栄養バランスに不安を感じます。


以上でアニモンダ・ニーレン(ウェット・400g缶)の説明は終了です。非常に長くなりましたね。お疲れ様でした。

お大事になさってください。