ナチュラルハーベスト・キドニアは療法食としてどうなの?

犬の慢性腎臓病の療法食であるナチュラルハーベスト・キドニアは療法食としてどうなの?

メーカーや販売店のHPを見ても同じことが載っているだけで、それが療法食としてどうなのか、わからないですよね。

どんな療法食なのかを知ることは、あなたの愛犬の予後すら左右しかねない重要なことです。

この記事では、慢性腎臓病の愛犬を持つ飼い主がナチュラルハーベスト・キドニアを誰よりも詳しく解説します。

あなた自身が、なるべく客観的にどんな療法食なのか理解できるように、分析値や原材料から療法食としての実力を丸裸にしてみました。

食べてくれる療法食で、愛犬のために何をしてあげるのがいいのかがわかるようになります。

食事であるので愛犬が食べてくるかどうかも大事ですが、こればっかりはあなたの愛犬次第なので省略します。

食事療法の最重要項目からレビューしてみた

慢性腎臓病の療法食あるいは食事療法では、量を制限した高品質なタンパク質、リンの制限、この二つが栄養学的に最も重要です。

しかし、愛犬の状態やステージ(進行度)によってどの程度制限すべきかは変わってきます。

そのため、療法食として与え続けるには、先を見越した長期的な視点が必要です。

ここでは、どのステージに適しているのか、参考になるよう、最重要項目のタンパク質とリンでレビューしてみます。

成犬の給与量目安で与える場合、ステージ3以降に適切だがエネルギー不足に要注意

ナチュラルハーベスト・キドニアは、100kcalあたりのタンパク質、リンともに療法食の中では高めです。特にタンパク質は、療法食(ドライ)では最も多くなっています。

メーカーは給与量目安を計算する際、愛犬の1日に必要なカロリーを低く見積もっています。メーカーのシニアの給与量目安ではカロリーが低すぎるため不適切で使用できません。

同じタンパク質とリンの摂取量なら、摂取カロリーが低い方が100kcalあたりの量は多く必要になります。

姑息なトリックと指摘する人もいるかもしれませんが、日本の住環境で暮らす運動不足になりがちな犬のために低カロリー、というのがメーカーのコンセプトのようです。

そのため、給与量の目安(成犬)で与える場合には、100kcalあたりのタンパク質とリンが高めでも、適切なレベルになりますが、エネルギー不足には要注意です。

慢性腎臓病の愛犬の場合はエネルギー不足は禁物です。

慢性腎臓病の愛犬の食事はタンパク質を制限します。

そのため、慢性的なエネルギー不足は、筋肉をエネルギー源として消費してしまい、筋肉量の低下による体重減少を招いていしまいます。

その結果、生活の質が低下し、食事でタンパク質を制限しているのに、筋肉(タンパク質)を分解することで窒素性老廃物も増えてしまいます。

筋肉量が低下し、寝たきり状態になると予後は思わしくありません。

愛犬は活動(運動)することでも健康を保っているので、疲れない程度の運動は必要です。人では運動療法も治療の一つとしてあるくらいです。

療法食の多くが給与量の目安に採用している標準的な成犬のエネルギー要求量で与える場合は、早期ステージの愛犬には適していると言えますが、ステージ3以降では療法食として与えることはできません。

シニア(FEDIAF栄養ガイドライン)のエネルギー要求量で計算して与える場合は、ステージ3以降の愛犬にはリンは適切といえますが、タンパク質が多いです。

原材料には良質なタンパク質源が使用された療法食です。

  • 給与量目安(成犬)で与える場合は、ステージ3以降に適切だが、エネルギー不足に注意
  • 標準的な成犬のエネルギー要求量で与える場合は、早期ステージには適している
  • メーカーの給与量目安「シニア」は不適切で使用できない

慢性腎臓病の愛犬の飼い主として、最重要項目のタンパク質とリンでレビューすると結論としては以上のようになります。

では、もっと具体的にはどうなのか?

まずは、ナチュラルハーベスト・キドニアの基本的な情報を確認してみます。

基本情報

日本発のオリジナルフードメーカーの療法食ですが、原産国はアメリカとなっています。

AAFCOの栄養プロファイルに基づいた成分分析値を公表しています。原材料の原産国もすべて公開されているメーカーです。

原材料

精製白米、α化米、全粒大豆(グリシニン源) 、グルコース、鶏卵、菜種油(ビタミンE、クエン酸で酸化対策済) 、ビートファイバー、亜麻仁、加水分解チキンエキス、硫酸カルシウム、ニシンミール、ゼオライト、プロバイオティクス(コアグランス菌、アシドフィルス菌)、塩化カリウム、イヌリン、オリーブオイル、 DLメチオニン、豚腎臓、塩化コリン、酸化防止剤(ビタミンE、ローズマリー抽出物)、ビタミンC 、トルラ酵母、魚油、ユッカ抽出物、ベータカロテン、硫酸亜鉛、ローズマリー、タウリン、硫酸鉄、ナイアシン、キチンキトサン、パパイヤ乾燥末、硫酸銅、クエン酸、硝酸チアミン、パントテン酸カルシウム、ビタミンA 、酸化マンガン、塩酸ピリドキシン、セレン酸ナトリウム、リボフラビン、ビタミンD3 、ビオチン、ビタミンB12 、ヨウ化カルシウム、葉酸

エネルギー

代謝エネルギー(ME):339kcal/100g

 

DERの計算式

  • 成犬:73kcal~102kcal×代謝体重(体重の0.75乗)
  • シニア:66kcal~85kcal×代謝体重

製品の代謝エネルギー(ME)は、比較表掲載の療法食(ドライ)の中で最も少なくなっています。

DER(1日あたりのエネルギー要求量)の計算式は、給与量の目安を見積もる時に、メーカーが採用しているであろう計算式です。

メーカーは愛犬の1日に必要なエネルギー量をどう計算して、給与量の目安としているのか、ということです。

日本の住環境を考え、運動不足になりやすいことを考慮しているメーカーなので、愛犬のエネルギー要求量も運動量がより必要になる大型犬ほど少なく見積もっているようです。

FEDIAF栄養ガイドラインでは、健康なシニアの最小のエネルギー要求量は80kcal×代謝体重ですが、慢性腎臓病の愛犬はタンパク質を制限するため、エネルギー不足は禁物です。

健康な犬であればいいですが、慢性腎臓病の愛犬には低いです。

しかも、成犬、シニアともに愛犬の体重が多いほど不適切になり、特にメーカーのシニアの給与量目安で与えてはいけません。

成犬50kgでは、安静時エネルギー要求量である70kcal×代謝体重に近く、シニアでは、30kgを超えると安静時エネルギー要求量を下回ってしまいます。

安静時エネルギー要求量
Resting Energy Requirements:RERと略す。体温維持に基礎代謝以外のエネルギーを必要としない温和な環境(熱的中性域)で、絶食をしていない状態で非活動時のエネルギー要求量のこと。例:入院中や食事と排泄時以外は寝ている状態など

FEDIAF栄養ガイドラインのエネルギー要求量の計算式では、標準的な成犬が110kcal×代謝体重、シニアが95kcal×代謝体重です。

係数を使う計算式なら、係数1.6と1.4相当です。標準的な成犬が1.6×RER=112kcal×代謝体重、シニアが1.4×RER=98kcal×代謝体重になります。

100kcalあたりの栄養素

栄養素 100kcalあたり
タンパク質 4.5g
リン 80mg
ナトリウム 29mg
カリウム 186mg
脂質 3.1g
炭水化物(NFE) 17.0g
EPA+DHA 13mg

基本的な情報は以上です。

それでは、具体的にどんな療法食なのか、ステージごとのタンパク質とリン制限の目安と比べて、療法食としての実力を詳しく見てみましょう。

なお、タンパク質とリン制限の目安は、愛犬チャコの手作り療法食のために調べた情報を基に、制限の目安として適切と考えられるものを、療法食の比較がしやすいようにまとめたものです。

詳しくは以下の記事を参照してください。

犬の慢性腎臓病の療法食-タンパク質とリンの制限はどのくらいが適切?

タンパク質はどうなっている?

CKDの食事療法では、タンパク質は、量は制限しつつも、良質なタンパク質が求められます。

給与量の目安で与えるならステージ3以降に適切だが、100kcalあたりでは最も多い

ナチュラルハーベスト・キドニアのタンパク質は、100kcalあたり4.5gです。

比較表掲載の療法食(ドライ)のタンパク質は、100kcalあたり3.2g(最小)~4.5g(最大)です。

比較表に掲載している療法食(ドライ)の中で最もタンパク質が多くなっています。

エネルギー要求量別ステージごとのタンパク質の目安

標準的な成犬(適度な活動量の中年の成犬、去勢・避妊済みの成犬)

  • ステージ1、2では、100kcalあたり4.2g~4.7g程度
  • ステージ3以降では、100kcalあたり3.4g前後
  • タンパク質の制限は100kcalあたり2.6gを下回らないこと

愛犬のエネルギー要求量を、FEDIAF栄養ガイドラインの計算式110kcal×代謝体重、またはDER=1.6×RER=112kcal×代謝体重で計算して給与する場合です。

シニア犬

  • ステージ1、2では、100kcalあたり4.9g~5.4g程度
  • ステージ3以降では、100kcalあたり3.9g前後
  • タンパク質の制限は100kcalあたり3.0gを下回らないこと

愛犬のエネルギー要求量を、FEDIAF栄養ガイドラインの計算式95kcal×代謝体重、またはDER=1.4×RER=98kcal×代謝体重で計算して給与する場合です。

給与量の目安(成犬)で与える場合の目安

ナチュラルハーベスト・キドニアの給与量目安は幅がありますが、85kcal×代謝体重として計算して与える場合、適切と考えられる制限の目安は以下のようになります。

  • ステージ1、2では、100kcalあたり5.4g~6.1g程度
  • ステージ3以降では、100kcalあたり4.4g前後
  • タンパク質の制限は100kcalあたり3.3gを下回らないこと

解説

ナチュラルハーベスト・キドニアは、標準的な成犬、シニア、どちらのエネルギー要求量で給餌する場合も、シニアではやや少ないですが早期ステージには適切と言えるレベルでしょう。

ステージ3以降の愛犬には、タンパク質が多く向いていません。

メーカーの成犬の給与量目安を85kcal×代謝体重としてエネルギー要求量を計算した場合では、ステージ3以降に適切と言えます。

ただ、実際には体重が多いほど、給与量目安でのエネルギー要求量はさらに低く見積もられているので、エネルギー不足が心配です。

特に中型犬以上では、給与量の目安(成犬)で与えるのはおすすめしません。給与量目安のシニアは不可。

良質なタンパク質源を使っている

アミノ酸のバランス(アミノ酸スコア)が良いものは、愛犬の体での利用効率が良く、余分な老廃物となるものが少ないとされます。

一般に、大豆などを除く植物性のタンパク質は、動物性のタンパク質に比べ栄養的価値は低いとされます。

肉や魚、卵、大豆などはアミノ酸スコアが良く、「良質なたんぱく質」です。

主なタンパク質源は、全粒大豆、鶏卵、ニシンミールです。

全粒大豆は良質なタンパク質が豊富ですが、原材料の状態ではリンが多く、ゆでた場合(水分を含んだ状態)でも肉と変わらないほどリンを含んでいます。

大豆に限らず、豆類は不溶性食物繊維が豊富なため、豆類を多く使ったドッグフード(グレインフリーなど)は不溶性食物繊維が多くなる傾向があります。必要以上に多いと栄養素の消化吸収率を下げてしまいます。

大豆に含まれるグリシニンというタンパク質には、コレステロール低下作用があり、トクホとしても利用されています。

タンパク質源としては良質なタンパク質を使った療法食といえます。

リンはどうなっているのか?

リンの制限は、慢性腎臓病の進行を遅らせることが示されているため、食事療法では最も重要な栄養素です。

給与量の目安で与えるならステージ3以降に適切だが、100kcalあたりのリンは高め

ナチュラルハーベスト・キドニアのリンは、100kcalあたり80mgです。

比較表掲載の療法食のリンは、100kcalあたり50mg(最小)~104mg(最大)です。

ステージごとのリン制限の目安

標準的な成犬(適度な活動量の中年の成犬、去勢・避妊済みの成犬

  • ステージ1、2では100kcalあたり80mg~100mg程度
  • ステージ3以降では100kcalあたり68mg以下

愛犬のエネルギー要求量を、FEDIAF栄養ガイドラインの計算式110kcal×代謝体重、またはDER=1.6×RER=112kcal×代謝体重で計算して給与する場合です。

シニア犬

  • ステージ1、2では100kcalあたり91mg~117mg程度
  • ステージ3以降では100kcalあたり79mg以下

愛犬のエネルギー要求量を、FEDIAF栄養ガイドラインの計算式95kcal×代謝体重、またはDER=1.4×RER=98kcal×代謝体重で計算して給与する場合です。

給与量の目安(成犬)で与える場合の目安

ナチュラルハーベスト・キドニアの給与量目安は幅がありますが、85kcal×代謝体重として計算して与える場合、適切と考えられる制限の目安は以下のようになります。

  • ステージ1、2では、100kcalあたり129mg以下
  • ステージ3以降では、100kcalあたり88mg以下

解説

リンは、メーカーの成犬の給与量目安を85kcal×代謝体重としてエネルギー要求量を計算した場合と、シニア(FEDIAF)のエネルギー要求量で与える場合、ステージ3以降に適切なレベルと言えます。

メーカーの成犬の給与量目安では、やはりエネルギー不足が心配です。

標準的な成犬のエネルギー要求量で与える場合は、早期ステージには適切といえますが、ステージ3以降にはリンは多いです。

愛犬の状態次第では重要になってくる栄養素もチェック

愛犬の検査結果や症状から獣医の指示がある場合は、制限が必要になる栄養素についてもどうなっているのか、知っておいた方がいいでしょう。

ナトリウム・カリウム

ナトリウムは、100kcalあたり29mgです。

比較表に掲載の療法食(ドライ)のナトリウムは、100kcalあたり24mg(最小)~90mg(最大)です。

カリウムは100kcalあたり186mgです。

比較表に掲載の療法食(ドライ)のカリウムは、100kcalあたりで117mg(最小)~280mg(最大)です。

ナトリウムとカリウムについては、どの程度が慢性腎臓病の愛犬にとって適切なレベルなのかは正直わかりません。

実際には、愛犬の状態を検査でモニタリングしながら対処することになると思います。

参考情報
臨床研究で予後の改善に有効であることが確認された療法食のナトリウムとカリウムは

  • ナトリウム:100kcalあたり40.5mg
  • カリウム:100kcalあたり83.3mg

比較表に掲載している療法食では、カリウムはすべてこれよりも多くなっています。ヒルズも現在は研究当時のものよりも多くなっているので、カリウムに関しては参考にならないかもしれません。

脂質

脂質は製品100gあたり10g、100kcalあたり3.1gです。

比較表掲載の療法食の脂質は、100kcalあたり3.1g(最小)~5.0g(最大)です。

獣医への相談が必須ですが、脂質が低いため、脂質の制限も必要な場合の選択肢になるかもしれません。

炭水化物・糖質

炭水化物は、製品100gあたり57.5g、100kcalあたり17.0gです。

※炭水化物はメーカーが公表しているもの以外は差し引き法による推定です。ドッグフード全体から、保証分析値の水分、タンパク質、脂質、灰分、食物繊維(粗繊維)を差し引いたもの(可溶性無窒素物:NFE)を炭水化物として推定しています。

食事療法にはほぼ必須!愛犬をサポートする成分はどうなっている?

愛犬にとってプラスの要素、つまり腎機能をサポートしてくれることが研究で示されている成分です。

これらはサプリメントなどで補うことができるので、療法食での優先度は高くありませんが、食事療法にはほぼ必須と考えた方がいいでしょう。

EPA+DHA

EPAとDHAの供給源となる魚油が原材料にあります。

EPA+DHAの合計で100kcalあたり13.3mgです。

EPA+DHAの慢性腎臓病向け用量
  • 代謝体重(kgBW0.75)あたりEPA+DHAで140mg
  • 100kcalあたりだとEPA+DHAは105mg~127mgになります

ナチュラルハーベスト・キドニアだけでは慢性腎臓病向け用量には明らかに足りません。

腸内環境を整える働きがある成分

ナチュラルハーベスト・キドニアでは、プレバイオティクスの供給源となる水溶性食物繊維を豊富に含むビートファイバーと亜麻仁、水溶性食物繊維であるイヌリンが原材料に使われています。

プロバイオティクス(コアグランス菌、アシドフィルス菌)も原材料として使われています。

抗酸化物質

ナチュラルハーベスト・キドニアでは、全粒大豆(サポニン源)、抗酸化作用をもつポリフェノールの1つリグナンが豊富な亜麻仁、グルタチオンが豊富なトルラ酵母、ビタミンC、ベータカロテンが原材料に使われています。

グルタチオンは、グルタミン酸、システイン、グリシンの3つのアミノ酸がつながったもの(トリペプチド)で、抗酸化作用があるほか、肝機能をサポートする成分としても知られています。医薬品(グルタチオン製剤)にも使われています。

その他原材料、療法食に特徴的な成分等

アルファ化米:炊飯直後に熱風で急速に乾燥させることにより、炊飯したご飯の時の消化されやすいα(アルファ)デンプンの状態を保ったお米のことです。

お米は、炊飯したものであっても、消化されにくい生の米の状態であるβ(ベータ)デンプンに戻ろうとするので、通常フードに使用される米よりも消化されやすい状態の原材料になります。


キチンキトサン:キチン・キトサンは主にカニなどの甲殻類からとれる多糖類に分類される成分で、キチンを処理することでキトサンが作られます。

ドッグフードでは食物繊維としての作用を期待して使われます。脂肪やコレステロールの吸収を阻害する作用があり、トクホやダイエットサプリにも利用されている。


ゼオライト:ゼオライト(沸石)は、活性炭のように非常に小さいミクロの穴が多く空いた構造をしている鉱物で、その吸着・浄化作用から私たちの生活のさまざまな分野に利用されています。

ドッグフードでは、排泄物の悪臭抑制に使われますが、慢性腎臓病の療法食では、その吸着作用から、腸管内で尿素、アンモニアなどの窒素性老廃物(いわゆる尿毒素)の吸着・除去(排泄)も期待されます。


以上でナチュラルハーベスト・キドニアの説明は終了です。非常に長くなりましたね。お疲れ様でした。

お大事になさってください。