ハッピードッグSano N(サノN)は療法食としてどうなの?

犬の慢性腎臓病の療法食であるハッピードッグSano N(サノN)は療法食としてどうなの?

メーカーや販売店のHPを見ても同じことが載っているだけで、それが療法食としてどうなのか、わからないですよね。

どんな療法食なのかを知ることは、あなたの愛犬の予後すら左右しかねない重要なことです。

この記事では、慢性腎臓病の愛犬を持つ飼い主がハッピードッグ・サノNを誰よりも詳しく解説します。

あなた自身が、なるべく客観的にどんな療法食なのか理解できるように、分析値や原材料から療法食としての実力を丸裸にしてみました。

食べてくれる療法食で、愛犬のために何をしてあげるのがいいのかがわかるようになります。

食事であるので愛犬が食べてくるかどうかも大事ですが、こればっかりはあなたの愛犬次第なので省略します。

食事療法の最重要項目からレビューしてみた

慢性腎臓病の療法食あるいは食事療法では、量を制限した高品質なタンパク質、リンの制限、この二つが栄養学的に最も重要です。

しかし、愛犬の状態やステージ(進行度)によってどの程度制限すべきかは変わってきます。

そのため、療法食として与え続けるには、先を見越した長期的な視点が必要です。

ここでは、どのステージに適しているのか、参考になるよう、最重要項目のタンパク質とリンでレビューしてみます。

リンは高くタンパク質は少ないアンバランスな制限の療法食

ハッピードッグ・サノNは、これだけを与えて愛犬の食事療法とするのは不安があります。

一体どのステージにある愛犬をターゲットにしているのかわからない療法食だからです。

これだけを与えて愛犬の食事療法とするのは不安があります。

一体どのステージにある愛犬をターゲットにしているのかわからない療法食だからです。

早期ステージの愛犬に与えるには、タンパク質の制限が厳しく、ステージ3以降の愛犬に与えるにはリンが高すぎる療法食です。

言い換えれば、タンパク質はステージ3以降に適していますが、リンは早期ステージに適しています。

一般的に、ステージが進むにつれて、タンパク質、リン、ともに制限は厳しくなりますので、タンパク質とリンのどちらも調整されるべきですが、ハッピードッグ・サノNは調整がアンバランスです。

手作りでは低リンでありながらタンパク質量を確保できる食材を選ぶのが基本です。

手作りする食材として見た場合、リンが高くタンパク質は低いという、真逆に当たる食材ですので、まず選ぶことはないでしょう。首を傾げたくなる処方ですね。

原材料には良質なタンパク質源が使用された療法食です。

早期ステージならタンパク質(補う)、ステージ3以降ならリン(制限)、それぞれ対策をする必要がある療法食です。特にリンは維持食の最小値程度の制限なので、要注意です。

慢性腎臓病の愛犬の飼い主として、最重要項目のタンパク質とリンでレビューすると結論としては以上のようになります。

では、もっと具体的にはどうなのか?

まずは、ハッピードッグ・サノNの基本的な情報を確認してみます。

基本情報

メーカー本国のドイツでは、日本では販売されていない、療法食ラインにあたるVETがあります。そちらにもHappy Dog VET Diet – Renal(腎臓ケア)があるので、ドイツでは影が薄いかもしれません。

原材料

トウモロコシ、米粉、ポテト粉末、牛脂、家禽脂、ミートミール(ビーフ、ポーク)、ビートファイバー*、乾燥全卵、加水分解レバー、ひまわり油、モルトスプラウト、サッカロマイセス・セレビシエ*、キャロット粉末、アルファルファ粉末、菜種油、塩化ナトリウム、ビタミン類(ビタミンA、ビタミンD3、ビタミンE、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビオチン、Dパントテン酸カルシウム、ナイアシン、ビタミンB12)、ミネラル類(鉄、銅、亜鉛、マンガン、ヨウ素酸カルシウム、亜セレン酸ナトリウム)その他栄養素(L-カルニチン)、天然由来トコフェロール(酸化防止剤として) *は乾燥

メーカー本国のドイツ公式(英語版)の原材料名には、家禽脂、ミートミール(ビーフ、ポーク)の間に「greaves」があります。

「greaves」は、レンダリング副産物(獣脂かす)、つまりミールのことです。ライトカロリーコントロールの原材料名では「greaves」をグリーブス(脱脂はらみ肉)としています。

日本仕様でもないので、サノNにはグリーブス(脱脂はらみ肉)が含まれているものとして扱います。

エネルギー

  • 代謝エネルギー(ME):384kcal/100g
  • DERの計算式:98kcal~103kcal×代謝体重(体重の0.75乗)≒100kcal×代謝体重

製品の代謝エネルギー(ME)はドイツ公式と日本とでは違うため、ドイツ公式の数値を掲載しています。

そのため、DERの計算式もドイツ公式の給与量の目安(Feeding Table)を参考にしています。給与量の目安では、給与量が端数処理されています。

98kcal~103kcal×代謝体重となっていますが、目安は出発点でしかないので、ここでは100kcal×代謝体重とみなして扱います。

DER(1日あたりのエネルギー要求量)の計算式は、給与量の目安を見積もる時に、メーカーが採用しているであろう計算式です。

メーカーは愛犬の1日に必要なエネルギー量をどう計算して、給与量の目安としているのか、ということです。

FEDIAF栄養ガイドラインのエネルギー要求量の計算式では、標準的な成犬が110kcal×代謝体重、シニアが95kcal×代謝体重です。

係数を使う計算式なら、係数1.6と1.4相当です。標準的な成犬が1.6×RER=112kcal×代謝体重、シニアが1.4×RER=98kcal×代謝体重になります。

ハッピードッグ・サノNはシニアよりもやや多い程度のエネルギー要求量で計算しているようです。

100kcalあたりの栄養素

栄養素 100kcalあたり
タンパク質 3.3g
リン 104mg
ナトリウム 26mg
カリウム 117mg
脂質 3.6g
炭水化物(NFE) 14.7g
EPA+DHA 非公表

基本的な情報は以上です。

それでは、具体的にどんな療法食なのか、ステージごとのタンパク質とリン制限の目安と比べて、療法食としての実力を詳しく見てみましょう。

なお、タンパク質とリン制限の目安は、愛犬チャコの手作り療法食のために調べた情報を基に、制限の目安として適切と考えられるものを、療法食の比較がしやすいようにまとめたものです。

詳しくは以下の記事を参照してください。

犬の慢性腎臓病の療法食-タンパク質とリンの制限はどのくらいが適切?

タンパク質はどうなっている?

CKDの食事療法では、タンパク質は、量は制限しつつも、良質なタンパク質が求められます。

タンパク質はステージ3以降の愛犬に適切なレベルに制限されている

ハッピードッグ・サノNのタンパク質は、100kcalあたり3.3gです。

比較表掲載の療法食(ドライ)のタンパク質は、100kcalあたり3.2g(最小)~4.5g(最大)です。

エネルギー要求量別ステージごとのタンパク質の目安

標準的な成犬(適度な活動量の中年の成犬、去勢・避妊済みの成犬)

  • ステージ1、2では、100kcalあたり4.2g~4.7g程度
  • ステージ3以降では、100kcalあたり3.4g前後
  • タンパク質の制限は100kcalあたり2.6gを下回らないこと

愛犬のエネルギー要求量を、FEDIAF栄養ガイドラインの計算式110kcal×代謝体重、またはDER=1.6×RER=112kcal×代謝体重で計算して給与する場合です。

シニア犬

  • ステージ1、2では、100kcalあたり4.9g~5.4g程度
  • ステージ3以降では、100kcalあたり3.9g前後
  • タンパク質の制限は100kcalあたり3.0gを下回らないこと

愛犬のエネルギー要求量を、FEDIAF栄養ガイドラインの計算式95kcal×代謝体重、またはDER=1.4×RER=98kcal×代謝体重で計算して給与する場合です。

給与量の目安で与える場合

ハッピードッグ・サノNはシニアよりもやや多い程度で、100kcal×代謝体重として計算すると目安は以下のようになります。

  • ステージ1、2では、100kcalあたり4.7g~5.2g程度
  • ステージ3以降では、100kcalあたり3.7g前後
  • タンパク質の制限は100kcalあたり2.7gを下回らないこと

解説

ハッピードッグ・サノNは、給与量の目安、標準的な成犬、シニア、どのエネルギー要求量で給餌する場合も、早期ステージには少なく制限が厳しいです。

ステージ3以降の愛犬には、シニアや給与量の目安で与える場合は少なく感じますが、進行することや同じステージ3でも状態が愛犬により異なるので、タンパク質は適切なレベルと言えます。

ただし、給与量の目安とシニアのエネルギー要求量で給餌する場合は、給与量を減らす際に制限の下限に注意が必要です。

標準的な成犬のエネルギー要求量で与える場合も、ステージ3以降には適切なレベルに制限されています。

良質なタンパク質源を使っている

アミノ酸のバランス(アミノ酸スコア)が良いものは、愛犬の体での利用効率が良く、余分な老廃物となるものが少ないとされます。

一般に、大豆などを除く植物性のタンパク質は、動物性のタンパク質に比べ栄養的価値は低いとされます。

肉や魚、卵、大豆などはアミノ酸スコアが良く、「良質なたんぱく質」です。

主なタンパク質源は、グリーブス(脱脂はらみ肉)、ミートミール(ビーフ、ポーク)、乾燥全卵、加水分解レバーです。

ミートミールは議論がある原材料ですが、原材料名からビーフとポークをミックスしたものというのがわかります。

EU圏のペットフードは、動物性原材料は、獣医の検査をパスした人間の消費に適合する動物由来でなければならないので、品質は心配する必要はありません。

加水分解レバーは、レバー由来のタンパク質を加水分解したペプチドとアミノ酸ということです。

タンパク質は、ペプチド(アミノ酸が数個つながった状態)とアミノ酸に分解されてから腸で吸収されます。

すでにペプチドやアミノ酸に分解された状態なので、その分、タンパク質よりも早く吸収されます。

ハッピードッグ・サノNは良質なタンパク質を使った療法食といえます。

リンはどうなっているのか?

リンの制限は、慢性腎臓病の進行を遅らせることが示されているため、食事療法では最も重要な栄養素です。

早期ステージには適切だが、ステージ3以降の愛犬にはリンが高すぎる

ハッピードッグ・サノNのリンは、100kcalあたり104mgです。

比較表掲載の療法食のリンは、100kcalあたり50mg(最小)~104mg(最大)です。

比較表の療法食(ドライ)の中では最もリンが多くなっています。

エネルギー要求量別ステージごとのリン制限の目安

標準的な成犬(適度な活動量の中年の成犬、去勢・避妊済みの成犬

  • ステージ1、2では100kcalあたり80mg~100mg程度
  • ステージ3以降では100kcalあたり68mg以下

愛犬のエネルギー要求量を、FEDIAF栄養ガイドラインの計算式110kcal×代謝体重、またはDER=1.6×RER=112kcal×代謝体重で計算して給与する場合です。

シニア犬

  • ステージ1、2では100kcalあたり91mg~117mg程度
  • ステージ3以降では100kcalあたり79mg以下

愛犬のエネルギー要求量を、FEDIAF栄養ガイドラインの計算式95kcal×代謝体重、またはDER=1.4×RER=98kcal×代謝体重で計算して給与する場合です。

給与量の目安で与える場合の目安

ハッピードッグ・サノNはシニアよりもやや多い程度で、100kcal×代謝体重として計算して与える場合、適切と考えられる制限の目安は以下のようになります。

  • ステージ1、2では、100kcalあたり110mg以下
  • ステージ3以降では、100kcalあたり75mg以下

解説

リンは早期ステージでは、給与量の目安、標準的な成犬、シニア、どのエネルギー要求量で与える場合も、適切なレベルと言えます。

しかし、リンの制限はFEDIAF、AAFCOの維持食の最小値程度で、いずれの場合もステージ3以降ではリンが明らかに高く制限が不十分です。

そのため、ステージ3以降の愛犬にこのまま与えるのは避けるべきでしょう。

別途リン吸着剤でリン対策することが必須です。進行すればリン吸着剤の用量が増え、費用的にも厳しいかもしれません。

愛犬の状態次第では重要になってくる栄養素もチェック

愛犬の検査結果や症状から獣医の指示がある場合は、制限が必要になる栄養素についてもどうなっているのか、知っておいた方がいいでしょう。

ナトリウム・カリウム

ナトリウムは、100kcalあたり26mgです。

比較表に掲載の療法食(ドライ)のナトリウムは、100kcalあたり24mg(最小)~90mg(最大)です。

カリウムは100kcalあたり117mgです。

比較表に掲載の療法食(ドライ)のカリウムは、100kcalあたりで117mg(最小)~280mg(最大)です。

ナトリウムとカリウムについては、どの程度が慢性腎臓病の愛犬にとって適切なレベルなのかは正直わかりません。

実際には、愛犬の状態を検査でモニタリングしながら対処することになると思います。

参考情報
臨床研究で予後の改善に有効であることが確認された療法食のナトリウムとカリウムは

  • ナトリウム:100kcalあたり40.5mg
  • カリウム:100kcalあたり83.3mg

比較表に掲載している療法食では、カリウムはすべてこれよりも多くなっています。ヒルズも現在は研究当時のものよりも多くなっているので、カリウムに関しては参考にならないかもしれません。

脂質

脂質は製品100gあたり14g、100kcalあたり3.6gです。

比較表掲載の療法食の脂質は、100kcalあたり3.1g(最小)~5.0g(最大)です。

脂質の制限を指示されている場合は、愛犬の療法食として与えることは出来ません。

炭水化物(可溶性無窒素物:NFE)

炭水化物は、製品100gあたり56.5g、100kcalあたり14.7gです。

※炭水化物はメーカーが公表しているもの以外は差し引き法による推定です。ドッグフード全体から、保証分析値の水分、タンパク質、脂質、灰分、食物繊維(粗繊維)を差し引いたもの(可溶性無窒素物:NFE)を炭水化物として推定しています。

食事療法にはほぼ必須!愛犬をサポートする成分はどうなっている?

愛犬にとってプラスの要素、つまり腎機能をサポートしてくれることが研究で示されている成分です。

これらはサプリメントなどで補うことができるので、療法食での優先度は高くありませんが、食事療法にはほぼ必須と考えた方がいいでしょう。

EPA+DHA

EPAとDHAの主な供給源となる原材料がありません。

EPAとDHAはもちろん、オメガ3脂肪酸の合計量も公表されていません。

EPA+DHAの慢性腎臓病向け用量
  • 代謝体重(kgBW0.75)あたりEPA+DHAで140mg
  • 100kcalあたりだとEPA+DHAは105mg~127mgになります

腸内環境を整える働きがある成分

ハッピードッグ・サノNでは、プレバイオティクスの供給源となるビートファイバーが原材料として使われています。他にも粉末の植物性原材料や酵母にも水溶性食物繊維は含まれています。

酵母は、サッカロマイセス・セレビシエという学名で表記されているのでわかりにくいですが、これが酵母あるいはイーストにあたります。ドイツ公式ではyeast(イースト)と表記されています。

生きた酵母であれば、プレバイオティクスになります。しかし、メーカーHPでは特に言及していませんので、わかりませんが、酵母としての働きは期待しない方がいいでしょう。

抗酸化物質

ハッピードッグ・サノNでは、抗酸化作用のある成分が多く含まれているキャロット粉末(β-カロテン)、アルファルファ粉末(サポニンなど)が使われています。

その他原材料、療法食に特徴的な成分等

L-カルニチン:脂質の代謝に必要不可欠なアミノ酸です。脂質からエネルギーを作り出すのに欠かせない成分です。

カルニチンは特に動物性原材料から摂取され、肝臓や腎臓で、アミノ酸のリジンとメチオニンから合成されるので、通常は補う必要はなく、必須栄養素でもありません。

慢性腎臓病の療法食ではタンパク質(アミノ酸源)を制限する必要があるため、動物性原材料も制限されますので、十分な量を確保するために補われます。


以上でハッピードッグ・サノNの説明は終了です。非常に長くなりましたね。お疲れ様でした。

お大事になさってください。