フォルツァ10リナールアクティブ(ドライ・小粒)は療法食としてどうなの?

犬の慢性腎臓病の療法食であるフォルツァ10リナールアクティブ(ドライ・小粒)は療法食としてどうなの?

メーカーや販売店のHPを見ても同じことが載っているだけで、それが療法食としてどうなのか、わからないですよね。

どんな療法食なのかを知ることは、あなたの愛犬の予後すら左右しかねない重要なことです。

この記事では、慢性腎臓病の愛犬を持つ飼い主がフォルツァ10リナールアクティブ(小粒)を誰よりも詳しく解説します。

あなた自身が、なるべく客観的にどんな療法食なのか理解できるように、分析値や原材料から療法食としての実力を丸裸にしてみました。

食べてくれる療法食で、愛犬のために何をしてあげるのがいいのかがわかるようになります。

食事であるので愛犬が食べてくるかどうかも大事ですが、こればっかりはあなたの愛犬次第なので省略します。

中粒(従来粒)について
フォルツァ10リナールアクティブ中粒(従来粒)は、成分値でリンが0.7%、乾物量(DM)で計算すると0.76%(0.76g/100gDM)あり、維持食と変わらないリン量になっているので、もはや療法食とはいえません。そのため掲載もしません。

食事療法の最重要項目から客観的にレビューしてみた

慢性腎臓病の療法食あるいは食事療法では、量を制限した高品質なタンパク質、リンの制限、この二つが栄養学的に最も重要です。

しかし、愛犬の状態やステージ(進行度)によってどの程度制限すべきかは変わってきます。

そのため、療法食として与え続けるには、先を見越した長期的な視点が必要です。

ここでは、どのステージに適しているのか、参考になるよう、最重要項目のタンパク質とリンでレビューしてみます。

メーカーの給与量目安で与えなければ、ステージ3以降の愛犬に適切

フォルツァ10リナールアクティブ(ドライ・小粒)は、メーカーの給与量目安で与えなければ、タンパク質、リンともに、ステージ3以降の食事療法として適切なレベルに制限された療法食になります。

適切なレベルに制限された療法食として与えることができるのは、シニアのエネルギー要求量で給与する場合です。

給与量の目安で与えた場合、リン制限が必要になるステージ2の愛犬では経過を見ることができるかもしれませんが、ステージ3以降の愛犬にはタンパク質とリンがやや多くなります。

利尿作用のある植物成分が複数使われ、その配合量まで明記されているため、見せかけではないようです。

ナトリウムが療法食(ドライ)の中で最も少なく、利尿作用が有効な場合、尿中へのナトリウムやカリウムの排泄量が増えるので、ナトリウムとカリウムのバランスが崩れる可能性があります。

また利尿作用があるということは、尿の排泄が増えるので、脱水に注意が必要になります。

ネットで誰でも購入できる療法食ですが、獣医への相談が必要な療法食です。

慢性腎臓病の愛犬の飼い主として、最重要項目のタンパク質とリンでレビューすると結論としては以上のようになります。

見せかけの原材料
ドッグフードでは、たとえごく少量でも使用していれば原材料に表記できる=メリットを訴求できてしまいます。原材料がやたらと多岐にわたる場合、例えば100g中にその原材料由来の成分はごくわずかで、意味をなさないものもある可能性があります。

では、もっと具体的にはどうなのか?

まずは、フォルツァ10リナールアクティブ(小粒)基本的な情報を確認してみます。

基本情報

日本で小粒として売られているものは、イタリア公式サイトの英語版に掲載されている製品です。中粒はイタリア語で掲載されているものです。小粒は日本仕様ではありません。

原材料

【通常粒】
米・ポテト・加水分解されたポテト・鶏脂肪・魚油・魚粉(ニシン)・ビートパルプ・ミネラル(Ca・P・Na・K・Mg・Zn・Fe・Se・I・Cl・S・Cu・Mn)・BioMOS(マンナンオリゴ糖)・FOS(フラクトオリゴ糖)・ユッカシジゲラ・DL-メチオニン・コリン・ビタミン(A・D3・E・C・PP・ビオチン・B12・パントテン酸・B2・B6・葉酸・B1・βカロチン)・銅アミノ酸キレート・天然トコフェロールとローズマリー抽出物(酸化防止剤として使用)

 

【AFS粒】
加水分解された魚蛋白(タラ)・加水分解されたポテト・ミネラル(炭酸カルシウム・リン酸二塩基)・マウス耳ヤナギタンポポ・ハギ・アメリカンクランベリー・ セイヨウタンポポ・ベアベリー

エネルギー

  • 代謝エネルギー(ME):381kcal/100g
  • DERの計算式:110kcal×代謝体重(体重の0.75乗)

DER(1日あたりのエネルギー要求量)の計算式は、給与量の目安を見積もる時に、メーカーが採用しているであろう計算式です。

メーカーは愛犬の1日に必要なエネルギー量をどう計算して、給与量の目安としているのか、ということです。

110kcal×代謝体重(体重の0.75乗)は、FEDIAF栄養ガイドラインの計算式で、標準的な成犬(適度な活動量の中年の成犬)のエネルギー要求量です。

係数を使う計算式なら、避妊去勢済みの成犬の係数1.6相当です。

1.6×RER=1.6×70kcal×代謝体重(体重の0.75乗)=112kcal×代謝体重

100kcalあたりの栄養素

栄養素 100kcalあたり
タンパク質 3.7g
リン 73mg
ナトリウム 24mg
カリウム 184mg
脂質 4.5g
炭水化物(NFE) 14.6g
EPA+DHA 425mg(オメガ3合計)

基本的な情報は以上です。

それでは、具体的にどんな療法食なのか、ステージごとのタンパク質とリン制限の目安と比べて、療法食としての実力を詳しく見てみましょう。

なお、タンパク質とリン制限の目安は、愛犬チャコの手作り療法食のために調べた情報を基に、制限の目安として適切と考えられるものを、療法食の比較がしやすいようにまとめたものです。

詳しくは以下の記事を参照してください。

犬の慢性腎臓病の療法食-タンパク質とリンの制限はどのくらいが適切?

タンパク質はどうなっている?

CKDの食事療法では、タンパク質は、量は制限しつつも、良質なタンパク質が求められます。

給与量の目安で与える場合、ステージ3以降にはタンパク質がやや多い

フォルツァ10リナールアクティブ(小粒)のタンパク質は、100kcalあたり3.7gです。

比較表掲載の療法食(ドライ)のタンパク質は、100kcalあたり3.2g(最小)~4.5g(最大)です。

エネルギー要求量別ステージごとのタンパク質の目安

標準的な成犬(適度な活動量の中年の成犬、去勢・避妊済みの成犬)

フォルツァ10リナールアクティブ(小粒)を給与量の目安で与える場合が該当します。

  • ステージ1、2では、100kcalあたり4.2g~4.7g程度
  • ステージ3以降では、100kcalあたり3.4g前後
  • タンパク質の制限は100kcalあたり2.6gを下回らないこと

愛犬のエネルギー要求量を、FEDIAF栄養ガイドラインの計算式110kcal×代謝体重、またはDER=1.6×RER=112kcal×代謝体重で計算して給与する場合です。

シニア犬

  • ステージ1、2では、100kcalあたり4.9g~5.4g程度
  • ステージ3以降では、100kcalあたり3.9g前後
  • タンパク質の制限は100kcalあたり3.0gを下回らないこと

愛犬のエネルギー要求量を、FEDIAF栄養ガイドラインの計算式95kcal×代謝体重、またはDER=1.4×RER=98kcal×代謝体重で計算して給与する場合です。

解説

フォルツァ10リナールアクティブ(小粒)は、給与量の目安つまり標準的な成犬のエネルギー要求量で与える場合、タンパク質はステージ2~3の中間といったところです。

ステージ3以降ではやや多いですが、年齢と共に活動量が低下し、給与量も調整するでしょうから、愛犬がシビアな状態でなければ、経過を見ることができそうです。

シニアのエネルギー要求量で与える場合は、ステージ3以降の愛犬には療法食として適切に制限されているといえます。

植物性タンパク質が中心で、動物性たんぱく質でアミノ酸スコアを高めている

アミノ酸のバランス(アミノ酸スコア)が良いものは、愛犬の体での利用効率が良く、余分な老廃物となるものが少ないとされます。

一般に、大豆などを除く植物性のタンパク質は、動物性のタンパク質に比べ栄養的価値は低いとされます。

肉や魚、卵、大豆などはアミノ酸スコアが良く、「良質なたんぱく質」です。

主なタンパク質源は、加水分解されたポテト、加水分解された魚蛋白(タラ)、魚粉(ニシン)です。

「加水分解されたポテト」となっているので、タンパク質源のようには思わないかもしれません。

しかし、メーカー公式(イタリア)の英語版では「hydrolysed potato protein(加水分解されたジャガイモ蛋白)」とありますので、主なタンパク質源として使われています。

蛋白の文字があるのとないのとでは、あなたの印象はきっと違うはずです。

日本語の原材料名は、意図的に動物性タンパクが多いように見せかけていると言われても仕方ないでしょう。

加水分解○○蛋白は、原料であるタンパク質源を酵素または酸(塩酸)でペプチドとアミノ酸に加水分解したものです。

加水分解された魚蛋白は、タラ由来のタンパク質を加水分解したペプチドとアミノ酸ということです。加水分解されたじゃがいも蛋白も同様です。

タンパク質は、ペプチド(アミノ酸が数個つながった状態)とアミノ酸に分解されてから腸で吸収されます。

加水分解○○蛋白などは、すでにペプチドやアミノ酸に分解された状態なので、タンパク質を分解する過程がないので、その分、タンパク質よりも早く吸収されます。

タンパク質の消化吸収率と生物価は別です。

生物価とは、簡単にいうと、タンパク質の利用効率のことです。消化吸収が良くても利用効率が悪いものは愛犬にとって価値が低いということになります。

生物価の低い植物性タンパク質が中心ですが、消化吸収の良い状態の原材料を使い、良質なタンパク質であるタラやニシンでアミノ酸のバランスをとることで利用効率を高めているようです。

リンはどうなっているのか?

リンの制限は、慢性腎臓病の進行を遅らせることが示されているため、食事療法では最も重要な栄養素です。

給与量の目安で与えた場合、ステージ3以降の愛犬にはリンがやや高い

フォルツァ10リナールアクティブ(小粒)のリンは、100kcalあたり73mgです。

比較表掲載の療法食のリンは、100kcalあたり50mg(最小)~104mg(最大)です。

エネルギー要求量別ステージごとのリン制限の目安

標準的な成犬(適度な活動量の中年の成犬、去勢・避妊済みの成犬

フォルツァ10リナールアクティブ(小粒)を給与量の目安で与える場合が該当します。

  • ステージ1、2では100kcalあたり80mg~100mg程度
  • ステージ3以降では100kcalあたり68mg以下

愛犬のエネルギー要求量を、FEDIAF栄養ガイドラインの計算式110kcal×代謝体重、またはDER=1.6×RER=112kcal×代謝体重で計算して給与する場合です。

シニア犬

  • ステージ1、2では100kcalあたり91mg~117mg程度
  • ステージ3以降では100kcalあたり79mg以下

愛犬のエネルギー要求量を、FEDIAF栄養ガイドラインの計算式95kcal×代謝体重、またはDER=1.4×RER=98kcal×代謝体重で計算して給与する場合です。

解説

標準的な成犬(給与量の目安で与える場合)のエネルギー要求量で与える場合、ステージ3は経過を見ることができそうですが、それで十分ということはないでしょう。

やや多めなので、別途、リン対策が必要になるということは想定しておいた方がいいでしょう。

シニアのエネルギー要求量で与える場合は、ステージ3以降の愛犬には療法食として適切に制限されているといえます。

愛犬の状態次第では重要になってくる栄養素もチェック

愛犬の検査結果や症状から獣医の指示がある場合は、制限が必要になる栄養素についてもどうなっているのか、知っておいた方がいいでしょう。

ナトリウム・カリウム

ナトリウムは、100kcalあたり24mgです。

比較表に掲載の療法食(ドライ)のナトリウムは、100kcalあたり24mg(最小)~90mg(最大)です。

カリウムは100kcalあたり184mgです。

比較表に掲載の療法食(ドライ)のカリウムは、100kcalあたりで117mg(最小)~280mg(最大)です。

ナトリウムとカリウムについては、どの程度が慢性腎臓病の愛犬にとって適切なレベルなのかは正直わかりません。

実際には、愛犬の状態を検査でモニタリングしながら対処することになると思います。

参考情報
臨床研究で予後の改善に有効であることが確認された療法食のナトリウムとカリウムは

  • ナトリウム:100kcalあたり40.5mg
  • カリウム:100kcalあたり83.3mg

比較表に掲載している療法食では、カリウムはすべてこれよりも多くなっています。ヒルズも現在は研究当時のものよりも多くなっているので、カリウムに関しては参考にならないかもしれません。

脂質

脂質は製品100gあたり17g、100kcalあたり4.5gです。

比較表掲載の療法食の脂質は、100kcalあたり3.1g(最小)~5.0g(最大)です。

脂質の制限を指示されている場合は、愛犬の療法食として与えることは出来ません。

炭水化物(可溶性無窒素物:NFE)

炭水化物は、製品100gあたり53.7g、100kcalあたり14.1gです。

※炭水化物はメーカーが公表しているもの以外は差し引き法による推定です。ドッグフード全体から、保証分析値の水分、タンパク質、脂質、灰分、食物繊維(粗繊維)を差し引いたもの(可溶性無窒素物:NFE)を炭水化物として推定しています。

食事療法にはほぼ必須!愛犬をサポートする成分はどうなっている?

愛犬にとってプラスの要素、つまり腎機能をサポートしてくれることが研究で示されている成分です。

これらはサプリメントなどで補うことができるので、療法食での優先度は高くありませんが、食事療法にはほぼ必須と考えた方がいいでしょう。

EPA+DHA

EPAとDHAの主な供給源となる魚油が原材料に使われています。

成分値はオメガ3脂肪酸のみで、オメガ3脂肪酸の合計は100kcalあたり425mgです。

EPA+DHAの慢性腎臓病向け用量
  • 代謝体重(kgBW0.75)あたりEPA+DHAで140mg
  • 100kcalあたりだとEPA+DHAは105mg~127mgになります。

必須脂肪酸であるα-リノレン酸(オメガ3)の供給源として鶏脂肪がありますが、アマニ油などの植物油に比べ含有量は多くありません。

そのため、オメガ3脂肪酸の合計のうち、多くの割合をEPAとDHAが占めるかもしれません。

仮にオメガ3脂肪酸合計の4分の1の量だとしても、EPA+DHAの慢性腎臓病向け用量は満たせそうです。

腸内環境を整える働きがある成分

フォルツァ10リナールアクティブでは、プレバイオティクスの供給源となるBioMOS(マンナンオリゴ糖)、FOS(フラクトオリゴ糖)が原材料に使われています。

原材料にこだわるドッグフードにたまに見られるBio-MOSは、成分名ではなく、Alltech社の商標登録された製品名です。

同社HPによれば、多くの臨床試験やレビュー(査読)で有用性が支持されている製品です。

抗酸化物質

フォルツァ10リナールアクティブでは、通常粒で抗酸化物質であるビタミンCが補われています。

AFSタブレットに含まれるフィトケミカル成分(植物栄養素)に抗酸化作用があるアメリカンクランベリー、 セイヨウタンポポ、ベアベリーが使用されています。

その他原材料、療法食に特徴的な成分等

英語版の原材料では、セイヨウタンポポ、ローズマリーは、「sensory additives」、直訳すれば感覚性(官能性)添加物として配合されています。

馴染みのない表現なので調べてみると、飼料の感覚刺激特性(官能的特性)を改善または変化させる物質を指し、EU圏では飼料添加物の一つになっています。

何のことだかわかりにくいので、さらに調べてみたら、Food Standards Agency(英国食品基準庁)によると、”sensory additives – flavourings and colourings”とあります。

つまり、風味料・香料や着色料のことです。

ローズマリー抽出物は抗酸化作用があり酸化防止剤としてよく使われるので、酸化臭の抑制=風味の調整になるので、どちらでもいい気はします。

セイヨウタンポポは日本のHPでは薬効を説明していますが、メーカー公式の英語版では嗜好性を良くする添加物として使われています。


AFSタブレットに含まれるフィトケミカル成分(植物栄養素)は、伝統的にメディカルハーブや民間医療で利尿作用や尿路系へ使用されてきたものです。

日本でもウワウルシ(原材料名のベアベリー)は、生薬や漢方として医薬品にも使用されます。

利尿薬は対症療法として高血圧やむくみ(体液バランスを整える)ために使用されることがあるかもしれませんが、愛犬によりステージや同じステージでも症状や状態は異なります。

つまり、愛犬の状況を診察や検査した上で処方されます。

リナールアクティブはナトリウム量が療法食で最も少なくなっています。

また、利尿作用がある植物成分が複数使用されていますので、ミネラルが尿として排泄される量が増え、ミネラルバランスに影響を与える(低ナトリウム)可能性があります。

配合されている量が適切かどうか、利尿作用が有効な量かは、残念ながらわかりませんでした。

愛犬にこの処方が適切かどうかは獣医に相談したほうがいいかもしれません。


以上でフォルツァ10リナールアクティブ(小粒)の説明は終了です。非常に長くなりましたね。お疲れ様でした。

お大事になさってください。